2022 Fiscal Year Annual Research Report
科学技術イノベーションの遍在化が国家安全保障に与える影響-米国を事例として-
Project/Area Number |
19K01518
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
松村 博行 岡山理科大学, 経営学部, 教授 (60469096)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国防イノベーション / イノベーション・エコシステム / エコノミック・ステイトクラフト / 米中対立 / デカップリング / デリスキング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,科学技術イノベーションが多様なアクターによって,そして世界の様々な場所で生起する今日の状況を「科学技術イノベーションの遍在化」と捉え,その成果をパワーの源泉として利用したい国家が,それを促進しながらもその成果を独占するという矛盾した政策目標をいかにして実現するのか,米国を事例として明らかにすることを目的としたものであった。 この問いに対する解を導出するために2つのアプローチをとった。第1の道はグローバルな人的資源を活用して科学技術イノベーション(以下,イノベーション)の促進を図りつつ,その成果をどのように防衛研究開発に導入しようとしているのか,その実態を明らかにすることである。この道筋については2020年の報告「STEM人材の受け入れを巡る政策決定-トランプ政権を中心に-」および2021年の単著「序論―イノベーション・エコシステムと安全保障」において明らかにした。 第2の道は米国で誕生したイノベーションの成果をいかに囲い込むのか,その手法の今日的特徴を明らかにすることである。これについては2019年の報告「エマージング技術の管理手法の模索:米国を事例に」,2020年の報告「米中ハイテク摩擦を巡る一考察-米国の対内投資規制および輸出規制の視点から」において取りまとめた。 ただし,本研究期間中にも米中間の対立は深刻化し,先端技術をめぐる問題は畢竟,両国の大国間競争あるいは地政学的競争の焦点として前景化し,それは単に輸出管理政策上のテクニカルな問題としてのみ捉えることはできなくなった。こうした状況の変化を2020年の報告「米中経済摩擦とエコノミックステートクラフト」,および2022年の報告「科学技術領域にみる米中デカップリングの現状」,さらには2022年の単著「科学技術領域にみる米中対立の構図-相互依存からデカップリングへの転換はなぜ生じたのか-」などで分析を行った。
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