2020 Fiscal Year Research-status Report
冷戦終結過程の複合的な国際交渉に関する史料実証研究
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19K01533
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
吉留 公太 神奈川大学, 経営学部, 教授 (00444125)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 国際政治史 / 外交史 / 冷戦 / アメリカ外交 / ヨーロッパ国際関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の主な研究成果の一つは「冷戦終結と分裂するアメリカ社会―ジョージ・H・W・ブッシュ」と題した論文を刊行したことである。同論文は青野利彦、倉科一希、宮田伊知郎編『現代アメリカ政治外交史―「アメリカの世紀」から「アメリカ第一主義」まで』(ミネルヴァ書房、2020年)の中に所収されている。 この編著所収論文は、ジョージ・H・W・ブッシュ政権期(1989年~1993年)のアメリカ国内政治の動向と国際情勢の展開の双方を整理したものである。その主な論旨としては、まず、アメリカ国内政治の動向について、ロナルド・レーガン前政権の立脚していた「新しい多数派連合」が1980年代後半から1990年代前半にかけて辿った変遷を追跡した。そしてブッシュ政権がこの変遷によって被った影響を分析した。さらに国際情勢の展開について、ペルシャ湾岸危機やソ連崩壊に関するアメリカの対応を分析した。 2020年度の主な研究成果のもう一つは、『ドイツ統一とアメリカ外交』(晃洋書房、近刊予定)と題した単著を執筆したことである。この単著は、1989年1月のブッシュ政権発足から、同年11月のベルリンの壁崩壊や12月の米ソマルタ首脳会談を挟んで、1990年10月のドイツ統一達成までを時期的な対象としたものである。具体的な内容としては、当時のアメリカの対ソ・対ヨーロッパ政策の展開とドイツ統一に関する国際交渉の推移を分析した。また、対ソ・対ヨーロッパ政策やドイツ統一についてアメリカ政府内に見解の相違が存在していたことを史料的な裏付けを伴って指摘するとともに、ドイツ統一交渉の推移についても主要な争点の帰趨を史料に立脚して解き明かした。そして序章と終章では、これらの史料実証分析を踏まえてヨーロッパ冷戦終結の性格についての検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の進捗がやや遅れている理由は、2020年度に新型コロナウィルス感染症の流行が深刻化したため、当初予定していた海外渡航を伴う史資料収集が難しくなったことにある。 この状況を受けて、2020年度は公刊された文献を収集するとともに、これまでに収集した史資料の精査することに重点を移していった。そして、本研究費交付初年度に当たる2019年度に収集した史資料から得られた知見を活字化することに重点を置いて研究活動を進めた。活字化についても図書館が使えないなどのコロナ禍の影響を被ったが、「研究実績の概要」に記したような成果を挙げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症の蔓延に伴う影響について、その収束を見通せない状態であり、海外における史資料収集を2021年度の研究活動の基軸とすることは難しいと思われる。そのため「現在までの進捗状況」に記した2020年度に行った対応を継続させ、公刊された文献収集と収集した史資料の精査を本格的に進めてゆく。それと同時に、これまで蓄積してきた文献や史資料に基づく情報を整理、分析して、学会での口頭発表の機会を行ったり、活字化を進めたりすることで、研究成果の公開に努めてゆく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴って、海外における史資料収集を行うことが困難になったため、旅費を執行することが難しくなった。また新型コロナウィスルに伴う二度の緊急事態宣言の発出などに伴って、学内入構にも規制がかかるなど、研究計画を幾度も練り直す必要に迫られたため次年度使用額が生じることになった。 練り直しの結果、「今後の研究の推進方策」などに記したように、2020年度の後半以降、研究活動の重点を公刊文献の収集と史料解析に重点を移しつつあり、2021年度においては重点移行を本格化させてゆく。それに伴って、文献購入やデータ処理のための物品費の比重を増してゆき、円滑に予算を執行してゆく計画である。
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