2021 Fiscal Year Research-status Report
The role of empathy in reconciliation: for effective apologies and lasting forgiveness
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19K01534
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
熊谷 奈緒子 青山学院大学, 地球社会共生学部, 教授 (10598668)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 和解 / 謝罪 / 赦し / 共感 / 学際的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
和解において、「共感」の存在が和解を促進する仕組みの解明を目的とする本研究においては、共感不在ゆえの「赦しの逆行」や「謝罪後の問題発言」が生ずる過程を特に研究している。 その研究の中で「共感」を生み出すことが困難な主な理由の一つである歴史認識問題における「歴史的事実」の解釈の相違という点に、特に焦点を当てた理論解釈研究を行った。 その中で、歴史的事実と政治的正義の混同という点を明らかにし、この両者の区別ができない理由について、18世紀以降から冷戦終焉を経て今日にいたるまでの西欧の歴史的事象の解釈の諸議論を、歴史学の文献などから把握した。その理由には、国民国家の形成、民族主義の高まり、人権意識の向上などがある。 特に人権意識の向上が、過去の不正義の実態をモデル化して考えることへの道徳的抵抗も生みだしていることに注目し、和解学における方法論自体の検討も始めた。慰安婦問題における「契約」成立をモデル化して、ゲーム理論で解明することに対する道徳的反発が強い中で、「契約」のモデル化の学術的有効性は、モデル化の元となった社会経済的事実の不偏的把握と、モデルの一般化の可能性の双方から議論されるべきであるという結論に至った。 また、「共感」を生み出す(もしくは生み出すことが難しい)背景をさらに広く知るべく、和解学の学際的性質に注目し、多分野からの和解学へのアプローチ(外交、市民運動(当事者と活動家の関係)、メディア、政治哲学、教育、植民地研究、地域研究(中国、韓国、欧州)など)の研究状況を把握した。これらの学際的視点から得られた知見は、「共感」を生み出す条件の精緻化にも資した。 事例研究では、中国人強制連行関連の事例研究は資料読み込みを中心に進めた。空襲訴訟は原告弁護士への聞き取り調査済み。コロナ禍の継続のため、海外での調査は来年度に持ち越された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍のために事例対象国での調査が遅れているため。
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Strategy for Future Research Activity |
事例調査対象国(中国、フィリピン)での聞き取り調査を行い、収集した情報をもとに、分析、執筆作業を進める。
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Causes of Carryover |
計画していた出張にゆくことができなかったため。
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Research Products
(3 results)