2022 Fiscal Year Annual Research Report
The role of empathy in reconciliation: for effective apologies and lasting forgiveness
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19K01534
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
熊谷 奈緒子 青山学院大学, 地球社会共生学部, 教授 (10598668)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 和解 / 謝罪 / 赦し / 花岡事件 / 中国人強制労働 / 広島安野 / バターン死の行進 / フィリピン |
Outline of Annual Research Achievements |
持続的な戦後和解の可能性を、諸事例から明らかにした。「バターン死の行進」での犠牲に対するフィリピンの厳しい対日姿勢は、日本の宗教、平和関係の非政府組織の様々な償い、現地支援の活動を通じて、日本との和解へと変容した。こうした草の根での活動は、結果として、現地において当初強い抵抗があった旧日本軍兵士の慰霊碑建立を可能にした。 多くのフィリピン人は、既に赦しているが、旧日本軍による拷問の建物を現在使用されている小学校の敷地内にそのまま保存するなど、「赦し」とは「忘却」ではないという姿勢を表している。 「バターン死の行進」の米軍捕虜は、議会と司法を通じての補償請求をしたが、政治的決着として日本政府が招聘プログラムを実施した。これについては、日米安保関係という要素も影響した。フィリピンで組織だった補償請求運動が難しかった背景には、市民社会の組織化、経済発展レベル、また日本との関係、被害者の多様性(フィリピン兵と現地の非戦闘員)などがある。 中国人労働者への補償・和解問題では、秋田の花岡と広島の安野を事例に、大企業相手の交渉での和解の難しさと、司法による和解勧告の有効性を実証した。謝罪の逆行は、企業ならではの行動論理(戦中は国策であったこと、戦後は株主や同業他社への配慮)が影響していた。これと対照的なのが、独企業のナチス下の東欧の強制労働被害者との和解であった。ドイツでは、ナチスと異なる政治体としての戦後ドイツの位置づけ、独企業の真相究明重視の姿勢、株主の反発には経済的利潤の展望をもって説得できるとの企業の自信などが、東欧の被害者との持続的和解の成功要因であった。 研究全体としては、司法による和解の促進機能、被害事実の直視がもたらす相手への共感の醸成、関係国の政治的関係の影響、政府と企業や市民の関係、被害者の明確化などが、和解を持続可能なものにするということを、明らかにした。
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Research Products
(1 results)