2023 Fiscal Year Research-status Report
オスマン帝国をめぐる国際関係の歴史的変容:「条約の書」の基礎的研究を通じて
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19K01535
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
黒木 真子 (松井真子) 愛知学院大学, 文学部, 教授 (80711324)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | オスマン帝国 / 国際法史 / 条約 / カピチュレーション / アフドナーメ / 盟約書 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は国内で主にこれまでの研究をまとめる活動をおこなった。また外交史関連の比較研究(科研費プロジェクト「外交の世界史の再構築」(代表:松方冬子)に参加することになり、本研究にも益すること大であった。昨年度に予定していた海外での資料収集は健康上の理由などのため実施できなかったが、研究成果の発表を進めることができた。 具体的成果としては、オスマン帝国の盟約書(アフドナーメ)にみられる最恵国条項の変容について、既発論文を英訳の形式で報告した(The Most-Favored-Nation Clause in the Ottoman ‘Ahdnames: A Case Study of the Late Eighteenth-Century Ottoman Treaties with Russia『人間文化』第38号)。またポーランドに対する盟約書を通時的に検討した研究を愛知学院大学文学部紀要第53号に「オスマン帝国の対ポーランド盟約書(アフドナーメ)にみる通商規定」として発表した。 先行研究の把握では、オスマン帝国とヴェネツィアの対外関係を専門とする堀井氏が2022年に刊行された『近世東地中海の形成』の書評や研究会でのコメントを通じて、アフドナーメ研究の近年の研究成果をふまえての研究を進めている。鈴木董氏がこれまでの帝国をめぐる国際秩序研究をまとめた『オスマン帝国の世界秩序と外交』についても書評を記し、日本におけるオスマン帝国をめぐる秩序についての学説史について考察する機会を得た。 さらに東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の髙松洋一氏とのアフドナーメ研究会を続行し(氏の後期イスタンブル在外研究にともない一時中断)、条文の解題作業を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ以後、海外での資料収集ができず、また昨年度は健康上の理由で医師から海外渡航は控えるようにとの助言を受けたため、一年間の研究延長を申請した。 本年度は9月にトルコ、イスタンブルに赴きオスマン文書館などで資料収集を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は9月にイスタンブルでの資料収集を行うほか、本研究の最終年度となるため総括を行う予定である。 また東京外国語大学アジア・アフリカ研究所の髙松洋一氏とのアフドナーメ研究会を、氏の在外研究からの帰国にともない再開し、条文の解読作業を適宜進め共編の転写および和訳改題付き条約集の刊行準備を進めていく。 科研費プロジェクト「外交の世界史の再構築」の8月研究会や、所属大学の紀要などを通じて成果を発表し、単著としての出版も準備していく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナの影響や、体調の問題があり、当初計画にあった海外での資料収集が数年間実施できず、昨年度も行うことができなかった。次年度使用額は本年9月に予定しているトルコ、イスタンブルのオスマン文書館での資料収集や、年度を通じての文献収集などに使用する。
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