2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K01541
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大和 毅彦 東京工業大学, 工学院, 教授 (90246778)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀋 俊毅 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (10432460)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ミクロ経済学 / ゲーム理論 / 実験経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ある一定の規模の公共財を供給するか否かを決める公共プロジェクトの実施問題について、良く知られているピボタル・メカニズムと自発的支払メカニズムのパフォーマンスを同じ経済環境の下で、経済実験を行い比較した。 二つのメカニズムは以下の理論的な特徴を持つ。自発的支払メカニズムは、絞り込まれたナッシュ均衡(支配される戦略を1回消去した後のゲームにおける支配されないナッシュ均衡)において,公共プロジェクト決定に関する最適性、パレート効率性,個人合理性を満たす配分を遂行できるが、均衡が実現するためにはプレイヤー間の完備情報が必要とされる。他方、ピボタル・メカニズムでは、不完備情報の下でも理論的にはうまく機能し、公共プロジェクトから得られる便益について真の値を報告することが各人の支配戦略となる。しかし、支配戦略均衡で公共プロジェクト決定に関する最適性は実現できるものの、パレート効率性と個人合理性は満たされない。このように、二つのメカニズムには、理論的には一長一短で優越はつかず、被験者を用いた経済実験でメカニズムの性能を比較する必要がある。 今回の実験では、各参加者が他の参加者の利得に関する情報を知っている完備情報の下で、これらの二つのメカニズムを比較した。また、メカニズムのルールのみを参加者に説明し、利得表は用いずに実験を行った。 実験では、パレート効率な配分を達成する割合、個人合理的な配分を達成する割合、余剰最大化を実現する割合の観点からは、自発的支払メカニズムの方がピボタル・メカニズムより高いパフォーマンスを示した。他方、公共プロジェクトを実施するか否かに関する決定効率性の観点からは、自発的支払メカニズムとピボタル・メカニズムの間には有意な差は観察されなかった。これらの結果は、実際の応用において、自発的メカニズムの方がピボタル・メカニズムよりうまく機能する可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
公共プロジェクトの実施問題について、ピボタル・メカニズムと自発的支払メカニズムのパフォーマンスを同じ経済環境の下で、経済実験を行い比較した。研究実績の概要で記述したように、公共プロジェクト決定に関する最適性、パレート効率性,個人合理性の観点から自発的メカニズムの方がピボタル・メカニズムよりうまく機能する可能性があるという興味深い結果を得ることができた。実験結果は英語の論文にまとめて、査読付き国際学術雑誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ピボタル・メカニズムと自発的支払メカニズムのパフォーマンスを同じ経済環境の下で比較した今回の実験では、各参加者が他の参加者の利得に関する情報を知っている完備情報の仮定の下で行ったが、各参加者が他の参加者が公共プロジェクトから得られる便益について知ってない不完備情報の下での実験も実施する必要がある。 また、ピボタル・メカニズム以外の理論的に性能が良いとされるメカニズムと自発的支払メカニズムのパフォーマンスの比較も必要である さらに、メカニズムへ参加するか否かについて、各個人が自由に決定できる場合において、公共供給メカニズムをパフォーマンスを比較する理論・実験研究も実施する必要がある。
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Causes of Carryover |
本年度実施する予定だったメカニズム・デザインに関連した実験を、次年度に実施することにしたのが理由である。実験を実施するための謝金などに使用する計画である。
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