2019 Fiscal Year Research-status Report
マクロ経済政策が構造変化と経済成長に与える影響:ケインジアンアプローチ
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19K01543
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤田 真哉 名古屋大学, 経済学研究科, 准教授 (80452184)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 機能的所得分配 / 金融政策 / 稼働率 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度においては,金融緩和策が成長と機能的所得分配に与える効果を需要主導のケインズ型マクロ動学モデルを用いて解析的に分析した。具体的には以下の2つの主要な結果が得られた。 まず第1に,利潤シェアの変化に対して投資が貯蓄よりも大きく反応する経済においては,金融緩和策によって稼働率(そして短期の経済成長率)がほとんど増加しないか,あるいは極端なときには低下するという,一般的に想定されるケースとは異なる現象が生じることを示した。第2に,金融緩和策が機能的所得分配に対して与える効果には多様なパターンがありうることを明らかにした。すなわち,いくつかの条件が満たされるとき,金融緩和は,直接労働者(非正規労働者と解釈できる)の賃金シェアの増加と間接労働者(管理労働者もしくは正規労働者と解釈できる)の賃金シェアの低下という,労働者間の(分配上の)分断を生み出しうることを示した。さらに金融緩和が利潤シェアの増加と間接労働者の賃金シェアの低下をもたらすときには,ジニ係数の増加が観察されうることを明らかにした。これらの分析結果を藤田真哉・細杏菜 (2020)「金融政策が所得分配に与える効果に関する社会経済学的分析」(『経済論叢』,第194巻,第1号,15-31頁)にまとめ,公刊した。 第2に,それぞれ別の(非代替的な)財・サービスを生産する2つの部門からなる成長モデルのサーベイを重点的に行った。そのうえで,消費選好の変化や公共支出の偏った分配が構造変化と経済成長に与える効果を分析できるフレームワークの構築に専念した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題に応える理論的なフレームワークの基礎を構築できたという点では,おおむね研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
構造変化と経済成長の関係を分析するためには複数の部門の存在を前提にしたモデルを構築する必要があるが,現段階では多部門モデル特有の複雑さへの対応ゆえに難航している。数値解析等の手法を取り入れて着実に研究を遂行したいと考えている。
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Causes of Carryover |
前年度には数値計算等の研究に必要な備品等を購入する段階には至らなかったため,次年度使用額がゼロにならなかった。翌年分は研究の進展状況に応じて,備品や学会出席のための必要支出額が増加する予定である。
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Research Products
(1 results)