2020 Fiscal Year Research-status Report
医師臨床研修マッチングにおける地域間格差に関する実証的及び理論的分析
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19K01552
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
戸田 学 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (30217509)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠島 洋一 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (30583166)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マッチング / 医師臨床研修 / 過疎地医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は新型コロナ感染拡大の影響を受けて学会,研究会などを対面で行うことができず予算消化が十分ではなかった上に教育活動もリモートとなり,それへの対応にエフォートが費やされた結果,実証研究などデータ収集等を必要とする作業へのエフォート配分は相対的に少なく,必ずしも現段階では十分とは言えない.しかし理論研究は予定していた以上の成果が得られたと考えている.理論研究は主に次の2点である. (1) "On the Incompatibility between stability and consistency" (2) "Weak consistency and new axioms for deferred acceptance with variable numbers of agents". 現時点ではどちらも未刊行の論文ではあるが非常に興味深い結果を報告するものと自負している.前者は病院の集合を固定した上で応募者の集合のみが変化するとして解の安定性と整合性が両立するのはどのような場合なのかを考察している.2つを同時に満たす解はすべての安定マッチングの集合を与えるようなものに限られるというのが結論である.後者は前者の結果を踏まえ同じドメインで受入保留メカニズムを弱整合性及びその他の公理を用いて特徴付けている. 従来の整合性公理は応募者のみならず病院側の数も変化することを前提にしていたが現実には応募者は変化しても研修機関が大きく変化することは考えにくい.そこで病院の集合を固定したままの整合性公理を考えた上でこれまでとほぼ同様の結果が得られることを示したのが(1)であり,また同じタイプの弱整合性公理を用いることでJRMPメカニズムが特徴付けられることを示したのが(2)である. これは Kojima and Manea (2010)の結果を補完するという点で意義のある分析と言える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はコロナ感染拡大に伴い学会参加,研究会への参加,開催などが大きく制限された上に教育活動もリモートに移行しそのための準備にこれまでとはまったく違うレベルでエフォートを消費することを余儀なくされた.したがって計画していた実証分析はとりわけ必要なデータ収集ならびに専門家との意見交換などに相当な困難が発生することになった.そのために年度内では十分な成果が得られているわけではない.しかしながら限られた生活様式の中で可能な限り理論研究に注力したおかげで非常に大きな結果が得られたものと考えている.研究実績の概要で述べたようにいずれも従来知られていた分析を発展させ,さらに拡充する定理や命題が複数得られている.その意味ではおおむね研究は当初の目的通り順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
実証分析については今後,コロナ感染の収束を待ちながら十分な時間をかけて進める予定である.理論研究は本年度得られた2つの未発表論文をさらに改訂しつつ査読雑誌への掲載を目指すつもりである.また,すでにほぼ完成している論文 (タイトル "Singles-monotonicity and stability in one-to-one matching problems") については近々,学術雑誌に投稿する予定である. この論文では1対1マッチングの場合に限られるが, JRMPメカニズムが otherside singles monotonicity という新たに提案された公理を満たすことが示されている.この条件と弱整合性を用いることで JRMPメカニズムの特徴づけ定理が得られるはずである.それについて別の論文を計画している.また,さらに参加者の数に上限が存在することを前提とした新しいタイプの整合性公理の定義が可能であることがごく最近わかってきた.そこでこれを用いてどのような理論構築ができるかについても分析を進める計画である.
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Causes of Carryover |
今年度は国内外のコロナ感染拡大を受けて予定していた国際学会への参加,研究集会の開催などがほぼ全面的に中止となり予算執行が十分行えなかった.また実証研究にも多くの困難が発生したために今年度は主に理論研究のみを実施した結果である.次年度以降はコロナの感染状況が改善することを前提に国際学会への参加や研究集会の開催,実証研究の継続を図る予定である.
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