2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K01557
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
無藤 望 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (40706222)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | メカニズム・デザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
メカニズム・デザインの理論においては、遂行に関する様々な条件が用いられる。本研究では、(弱い意味で)支配されない戦略による遂行を考えた。これは、メカニズム内の戦略から支配される戦略を除いた残りの戦略組による遂行である。支配関係は、状態に関する確率分布など、環境の細部に依存しないことから、支配されない戦略による遂行は頑健な遂行概念であると言える。 支配されない戦略による遂行に関する従来の文献では、社会選択対応が遂行されるための十分条件について、一般の環境下ではよく知られていなかった。本研究では、遂行のためのメカニズムを構築するための新たな手法を見出すことによって、一般の環境下での十分条件を提示した。この十分条件は、容易に検証可能であり、比較的広い範囲で成立するものである。 さらに、この十分条件を用いて、いくつかの応用的な環境において、従来考えられていた耐戦略的な社会選択関数を上回る社会選択対応が遂行可能であることを示した。ここで「上回る」とは、任意の状態において、後者が割り当てる任意の帰結を前者が割り当てる帰結よりも設計者が弱い意味で選好し、ある状態においては後者が割り当てるある帰結を前者が割り当てる帰結よりも強い意味で選好することとして定義する。 例えば、オークションの環境においては、セカンド・プライス・オークションによる社会選択関数に、すべての余剰を事後的に売り手が吸収する帰結を加えて社会選択対応が遂行可能であることがわかる。二部マッチングにおいては、片側最適安定マッチングによる社会選択関数に、他の安定マッチングを加えた社会選択対応が遂行可能であることがわかる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍で、海外の共同研究者への出張や、共同研究者の招聘ができなくなった時期が続いたため、当初予定よりも進捗が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要に記載した内容を含む論文原稿が完成しており、論文雑誌へ投稿中である。現在は、さらに強い結果が得られるかどうかを検証しているところである。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で研究計画に少々の遅延があったため。2023年度は、その未使用額を、海外の共同研究者への出張や、共同研究者の招聘のための旅費に主に用いる。
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