2019 Fiscal Year Research-status Report
Estimation of nonlinear DSGE models and their application to macroeconomic analysis
Project/Area Number |
19K01560
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
廣瀬 康生 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (50583663)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 非線形モデル / 動学的一般均衡モデル / DSGEモデル / 二国間モデル / ベイズ推定 / 為替レート / 確率的ボラティリティ / 名目金利の非負制約 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、まず、非線形の二国間動学的一般均衡モデルを米国および欧州のデータを用いて推定し、為替レートの変動要因を分析した。具体的には、標準的な二国間モデルに確率的ボラティリティを導入したうえで3次近似によってモデルを解き、Central Difference Kalman FilterやSequential Monte Carlo法といった新手法を用いて推定を行った。推定されたパラメータを所与として為替レートの分散分解を行った結果、カバーなし金利平価からの乖離を表す「リスク・シェアリング・ショック」が為替レート変動の主たる要因である一方、ボラティリティ・ショックもそれなりに寄与していることが分かった。分析結果は、論文「Is Exchange Rate Disconnected After All?」(藤原一平氏、Chen, Yu-chin氏との共著)に取り纏め、ワシントン大学主催のWest Coast Workshop on International Financeで発表した。現在は、学術雑誌への投稿に向けて論文の改訂を行っている。 次に、名目金利の非負制約を含む中規模型非線形動学的一般均衡モデルを米国と日本のそれぞれのデータを用いて推定し、線形のモデルを推定した場合と比べてパラメータの推定値にどのような差異が生じるかを分析した。分析の結果、米国のデータを用いた場合、非線形モデルと線形モデルでパラメータの推定値はほぼ同じであったのに対して、日本のデータを用いた場合、定常状態のインフレ率と価格や賃金の硬直性に関するパラメータの推定値に違いが現れることが分かった。これは、米国と日本では名目金利がほぼゼロであった期間が異なるためであると考えられる。現在は、分析結果を砂川武貴氏との共著論文として発表すべく、追加分析を行っている最中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、研究初年度にあたる令和元年度は、分析に用いる動学的一般均衡モデルを構築したうえで、非線形モデルの解法および推定手法の検討を行うことを計画していた。実際は、研究実績の概要に記したとおり、既に非線形モデルの推定を行い、分析結果を論文に取り纏めていることから、当初の計画以上に進展していると評価している。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは、論文「Is Exchange Rate Disconnected After All?」の改訂を進め、できる限り早いタイミングでワーキング・ペーパーとして公表したい。その後、いくつかの国際コンファレンスやセミナーで発表し、論文の宣伝とコメントの集約を行ったうえで、学術雑誌への投稿を目指す。 名目金利の非負制約を含む中規模型非線形動学的一般均衡モデルの推定に関するプロジェクトの追加分析も進める。具体的には、非線形モデルと線形モデルでパラメータの推定値に違いが出る理由がデータのゼロ金利期間に依拠していることをより一般的に示すために、モンテカルロ分析を行うことを計画している。既に得られている推定結果と合わせて、論文として公表する。 これら以外にも、非線形モデルの推定に関する新しいプロジェクトをスタートさせる予定である。
|
Causes of Carryover |
(理由) 令和元年度中にハイスペックなワークステーションを導入することを計画していたが、共同研究者の所属先のワークステーションや関連先のスーパーコンピュータが利用可能であることが判明し、それを見送ったため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 国際コンファレンスで研究成果の発表を行うための旅費に加えて、論文の英文校閲や学術雑誌への投稿にかかる費用に使用する予定。
|