2021 Fiscal Year Research-status Report
資産分布および所得分布に対するインフレーションの動学的効果
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19K01564
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
後閑 洋一 立命館大学, 経済学部, 教授 (30324502)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 貨幣の超中立性 / Sidrausuki(1967) / 貨幣的成長モデル / インフレ率 |
Outline of Annual Research Achievements |
University of Washington(ワシントン大学)のStephen Turnovsky(ステファン・ターノフスキー)教授との共著の論文「Wealth and income inequality in a monetary economy」がEconomic Theory Bulletin(2021)225-245に掲載された。 Sidrausuki(1967)による論文では定常状態における資本ストックおよびGDPの平均値はインフレとは独立に決定するという「貨幣の超中立性」が証明されている。 我々の論文ではSidrausuki(AER, 1967)によるモデルに経済主体の異質性が明示的に考慮されている。そのモデルを用いて資本ストックや所得の標準偏差はインフレとは独立に決定しないことを示した論文である。すなわち平均値とは違い、資本ストックやGDPの標準偏差(分布)においては「貨幣の中立性」は成立しえないことを理論的に示した論文である。 Economic Theory Bulletinのエディターからはこの分野の専門家から興味を持たれるであろう論文と評価していただいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の論文はすでに完成し、Economic Theory Bulletinに掲載されている。2本目のStephen Turnovsky教授との共著論文はすでに海外のレフェリー性のジャーナルへ投稿済みであり現在結果を待っている。1本目に続き2本目の論文もレフェリー性のジャーナルに掲載されるよう努力する次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在投稿中の2本目の共同研究もSidrausuki(1967)の貨幣的成長モデルを用いているが、1本目の論文と異なりモデルの中に政府投資と政府消費を明示的に考慮し、さらに資本ストックと貨幣の代替的な資産として国債が存在している。エディターおよびレフェリーからの返事を受け取ることが出来た後に彼らの助言を元に論文を書き直し、レフェリー性のジャーナルに掲載されるように努力したい。 論文の中身に関しては大きな修正の必要はないと考えているが、細かな点では修正が必要な可能性はあると思うので、レフェリーの助言などを元に論文の完成度を高めていきたいと思う。
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Causes of Carryover |
University of WashingtonのStephen Turnovsky教授との共同研究を遂行するために取得した科研費であるが、コロナ禍により共同研究のために直接University of Washingtonへ訪れることが出来なくなり、そのために旅費が大幅に余ってしまったことが主な原因である。 共同研究そのものは非効率になってしまったがメールなどを用いて共同研究を行った。今年度はコロナ禍ではあるが、以前よりコロナの状況も多少は改善しているので、University of Washingtonへ直接訪問したり、国際学会で発表などを行うことにより取得した科研費を執行していきたいと考えている。
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