2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K01568
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
大洞 公平 関西学院大学, 経済学部, 准教授 (70388354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
室岡 健志 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (10796345)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マルチタスク / 損失回避 / 参照点依存型選好 / シグナリング / 投票 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、(1)マルチタスク問題と情報共有の関係、(2)投票棄権行動と損失回避の関係、(3)商品の複数期間にわたる価格付けと損失回避の関係、といったテーマについて主に研究を進めた。
テーマ(1)では、エージェントが二つの職務に従事するマルチタスクモデルにおいて、成果が立証不可能であるがプリンシパルにとっても重要な職務に関する情報をエージェントが有する情報の非対称性問題を考慮したモデルを分析している。もう一方の立証可能である職務への高いインセンティブが、情報共有を促進する可能性があることなどを示している。テーマ(2)では、有権者間で候補者に関する選好の不確実性がある投票モデルを分析している。有権者が期待に基づく参照点依存型選好を有する場合、損失回避の影響で棄権が起こりやすくなることなどを示している。テーマ(3)では、企業の複数期間にわたる商品の価格付けの問題を、消費者の動学的な期待に基づく参照点依存型選好を考慮したモデルで分析している。価格付けを通して消費者の商品に関する情報がアップデートされる場合、消費者の損失回避性向から初期の段階で商品を無料で提供するような価格体系が望ましいことなどを示している。なお、テーマ(1)に関しては、研究代表者と研究分担者の共同研究、テーマ(2)に関しては、研究代表者と研究協力者(多鹿智哉北星学園大学経済学部専任講師)の共同研究、テーマ(3)に関しては、研究分担者の単独研究である。
各テーマについて、研究代表者、研究分担者、研究協力者の間で意見交換を行い、研究段階に応じて、モデル構築、分析を経て、一定の結果を得ている。それを研究会などで報告し、改訂を重ね論文の作成を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体的におおむね順調に進んでいる。まず、マルチタスク問題と情報共有の研究に関しては、研究代表者と研究分担者で共同作業を進めている。研究会での報告などを重ね、論文を改訂し、論文の完成、学術誌への投稿を目指している。次に、投票棄権行動と損失回避の研究に関しては、研究代表者が研究協力者とともに議論をはじめ、モデルの構築、分析を経て、論文を完成させた。その論文に関しては、ディスカッションペーパーとして公表した後、現在学術誌に投稿中である。最後に、商品の複数期間にわたる価格付けと損失回避の研究に関しては、研究分担者が研究会などで報告を重ね、論文分の改訂を進めた。なお、それぞれの研究について、研究代表者、研究分担者、研究協力者の間で、研究打ち合わせを行いながら、論文の作成、改訂作業を進めてきた。
以上の通り、基本的に順調に研究を進めたが、COVID-19の影響で、年度後半に計画していた国内外から研究者を招いて行う研究会、コンファレンスなどのいくつかは中止、規模を縮小しての開催となった。また、それらへの参加も含め、いくつかの出張に関しても取りやめた。その代替として、次年度以降に改めてそのような機会を作り、研究者間の交流を通して研究の質をより高めるようにしていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もこれまでと同様に、研究代表者、研究分担者、研究協力者間で連携をとり、各研究テーマのステージに応じて対応し、学術誌への論文の出版を目指したい。具体的には、研究者間での共同研究打ち合わせの開催、研究会、学会に参加して報告、および、参加者らとの意見交換を継続的に行い、論文の改訂を重ねる。その後、一定の成果を得て論文としての体裁を整えた段階でディスカッションペーパーとして公開する。これらの作業を経て、論文を完成させ、学術誌への投稿を目指したい。
また、意見交換の機会として、国内外の研究者を招いて研究会、コンファレンスを開催することも計画している。ただし、このような研究者間の交流を伴う活動に関しては、社会的情勢を考慮しながら、適宜対応するように心がけたい。
最後に、研究が順調に進んでいることから、上記で挙げたテーマ以外の新たなテーマに関しても模索していきたいと考えている。その場合も、研究代表者、研究分担者、研究協力者間での意見交換はもちろんのこと、研究会、学会での他の研究者との意見交換の機会を十分に活用したいと考えている。
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Causes of Carryover |
年度後半に計画していた研究会、コンファレンスなどについて、COVID-19の影響で中止になるなどの急な予定変更が生じた。そのために計画していた出張の取りやめなどで次年度使用額が発生した。なお、取りやめた研究会などに関しては、2020年度以降に別の形で改めて開催することを検討している。
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