2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K01568
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
大洞 公平 関西学院大学, 経済学部, 准教授 (70388354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
室岡 健志 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (10796345)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マルチタスク / 損失回避 / 参照点依存型選好 / シグナリング / 投票 / プリンシパルーエージェント |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、(1)マルチタスク問題と情報共有の関係、(2)投票棄権行動と損失回避の関係、(3)罰則とインセンティブの関係、といったテーマについて主に研究を進めた。さらに(4)情報投影バイアスと意思決定のタイミングの関係というテーマの研究を新たに進めた。 テーマ(1)では、エージェントが二つの職務に従事するマルチタスクモデルにおいて、成果が立証不可能であるがプリンシパルにとっても重要な職務に関する情報を、エージェントが有するという情報の非対称性問題を考慮したモデルを分析している。テーマ(2)では、有権者間で候補者に関する選好の不確実性がある投票モデルを分析している。有権者が期待に基づく参照点依存型選好を有する場合、損失回避の影響で不利な候補の支援者による棄権が起こりやすくなることなどを示している。本論文は数回にわたる改訂を経て学術誌に掲載が認められた。テーマ(3)では、動学的プリンシパルーエージェント・モデルにおいて、プリンシパルがエージェントの行動をコントールする機会がある場合、エージェントがそれに対する反発としてプリンシパルにとって望ましくない行動をとり、それが将来の報酬を引き上げる可能性を示している。その可能性を加味して、プリンシパルがコントロールする機会を持つべきかどうかという点も議論している。本論文は学術誌へ投稿中である。テーマ(4)では、複数プレーヤーが存在する状況で、あるプレーヤーが問題を発見した時にそれをどのタイミングで公表するかという問題を分析している。そこでは、各プレーヤーは自分の持っている情報を相手に投影して行動を決定するという情報投影バイアスを考慮し、このバイアスが存在する場合、問題発見時に公表しなくても、その後に公表する可能性について議論している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テーマ(1)のマルチタスク問題と情報共有の研究に関しては、研究代表者と研究分担者で共同作業を進めている。現在、最終稿完成に向け定期的に打ち合わせを行い作業している。テーマ(2)の投票棄権行動と損失回避の研究に関しては、学術誌への掲載が決定した。テーマ(3)の罰則とインセンティブの研究に関しては、研究協力者の報告などを経て改訂を重ね、現在学術誌へ投稿中である。テーマ(4)情報投影バイアスと意思決定のタイミングの研究に関しては、研究代表者と研究協力者で共同作業を進めている。すでに主要な結論を得ており、それをまとめて初校の完成を目指している。その後、研究会などで報告を経て改訂を行い、学術誌への投稿を目指す。 昨年度に引き続き、COVID-19の影響で、当初出張を予定していた研究会、コンファレンスなどはオンライン開催などへ移行したが、以上の通りおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もこれまでと同様に、研究代表者、研究分担者、研究協力者間で連携をとり、各研究テーマのステージに応じて対応し、学術誌への論文の出版を目指す。具体的には、研究者間での共同研究打ち合わせの開催、研究会、学会での報告、および、参加者らとの意見交換を継続的に行い、論文の改訂を重ねる。その後、論文をディスカッションペーパーとして公開し、学術誌への投稿を目指す。また、海外の機関に滞在して研究に関する意見交換を行うことも検討している。研究者間の交流を伴う活動に関しては、引き続き社会的情勢を考慮しながら、オンラインの活用など適宜対応するように心がける。 最後に、研究が順調に進んでいることから、引き続き上記で挙げたテーマ以外の新たなテーマに関しても模索していく。その場合も、研究代表者、研究分担者、研究協力者間での意見交換はもちろんのこと、研究会、学会での他の研究者との意見交換の機会を十分に活用する。
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Causes of Carryover |
当初計画していた研究会、コンファレンスなどについて、COVID-19の影響でオンライン開催になるなど急な予定変更が生じた。そのために計画していた出張の取りやめなどで、次年度使用額が発生した。次年度以降は、社会的な情勢を見極めながら、研究会の開催方法、出張などの可能性を再検討する。次年度使用額は、オンラインによる学会参加、打ち合わせなどに対応する機器および可能な場合は出張旅費とする。
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