2020 Fiscal Year Research-status Report
プロト・ポリティカル・エコノミストとしてのJ.バトラー:自然神学・利己心・蓋然性
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19K01571
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
有江 大介 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 名誉教授 (40175980)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 哲人 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (70735828)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ジョゼフ・バトラー / イングランド国教会 / 説教 / 良心 / 経験論 / 蓋然性 / 商業社会 / 功利主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
18世紀ブリテン思想史と社会的影響力の両面において枢要でありながら、今日、本国でも忘れられた神学者、思想家となったJ.Butler(1692-1752)を再発掘することが本科研費研究の中心的課題である。この分野の古典である未翻訳の研究書の共同翻訳と、研究グループによる共同研究の成果を日本語だけでなく英語でも出版することを目指している。 2020年度は、以上の両面から過年度より続く「バトラー研究会」をZoomにて一般にも公開する形で4回開催した。 ・第7回バトラー研究会(2020年6月28日):①協議:「共同翻訳中のE. S. Mossner, Joseph. Butler and the Age of Reason (1936) の進捗状況」大久保正健(研究協力者、訳者代表)、②報告:「実験哲学から経験論へ―王立協会の思想史的意義について」青木滋之(中央大学)、・第8回バトラー研究会(2020年10月4日)①報告:「翻訳対象本モスナー『バトラー主教と理性の時代』概説」大久保正健、②参加者によるコメントと討論、・第9回バトラー研究会(2020年12月20日)①報告:「国教会牧師としてのジョナサン・スウィフト―その宗教的言説を眺める」中島渉(明治大学)、②協議:共同翻訳本の初稿提出原稿について、第10回バトラー研究会(2021年3月14日)①報告:「バトラーによる良心の権威の擁護をめぐって」水野俊誠(慶応義塾大学)、②協議:共同翻訳書刊行についてと共同論文集作成に向けての2021年度のスケジュール確認 以上の共同研究活動を通じて、研究課題への全体の理解が深まるとともに、翻訳書刊行の具体的スケジュールが明確となり、次年度以降の次の段階への重要なステップを踏むことができた。ただし、研究代表者が報告を予定していた国際学会がコロナ禍のため次年度以降に延期となってしまった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に示したように、年間4回の研究集会を開催し本科研費の研究課題に直結する報告、討議を行うことができた。その結果、まず、本共同研究の2本柱一つ、未訳の古典的研究書の共同翻訳原稿が出そろい、その最終調整の段階に入っている。同時に、学術書刊行に向けてのいくつかの出版社に打診を始めた。また、もう一つの柱である共同論文集の刊行に向けた継続的な研究集会を支障なく実施できた。 しかし、現下のコロナ禍において学術書出版の環境は好ましいものではなく、研究成果の公刊については必ずしも楽観を許さない状況と言わざるを得なくなってしまった。これが「おおむね」と評価する理由の一端である。 共同研究については、これもコロナ禍によって予定していたレベルの成果が得られなかった嫌いがある。特に内容的にも数量的にも本来中核となるべき若手研究者層が、学務の煩雑化や遠隔授業の拡大による教育負担の予想外の拡大等により必ずしも十分な研究時間が確保できず、当初予定していた研究集会での報告に至らなかったケースが一定程度見られた。これが、「おおむね」と評価するもう一つの理由である。 また、以上のような状況で、当初計画していた外国学会での報告と討議、日本開催の国際学会への報告と討議、英国の大英図書館やダラム大学での資料調査、英米の対応する研究者とのZoom等による研究交流など、すべてが延期、中止となってしまったことも不可抗力とはいえ「おおむね」とする理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、上記2本柱の研究計画の内、共同翻訳については目処が立ったので、共同研究を共同論文集として刊行するする方向で研究を推進する。そのために、当初からの研究代表者、研究分担者、研究協力者に加え、共同翻訳に関与した多くの若手研究者、これまでの研究集会での報告者などで構成される研究グループ全体で、バトラーに関係するテーマによる研究集会を引き続き連続的に開催する。 具体的には、すでに「バトラー研究会論文発表申請用紙」を研究グループに配布しており、共同研究の初期に各自から提示された予想論文テーマを踏まえた、各自の現在の関心からの最終的な論文タイトルを集約しているところである。また、研究代表者において、共同論文集の「執筆要項(案)」が既に作成されている。これらをもとに、既に10回開催している研究集会において、一回につき2本の予定論文報告を内容として、今後最低4回ないし5回はは2021年度末までには開催する計画である。 しかし、問題はやはりコロナ禍におかれた大学の状況であり、以上のような計画が果たして予定通り実施できるかは不確かであると言わざるを得ない。これは、2020年度に計画したにも関わらず実現できなかった国際学会報告や日本での国際研究集会参加、英国での現地資料調査などについても同様である。極力努力する所存ではあるが、万一不調に終わった場合には科学研究費による本研究の研究期間の1年延長を申請せざるを得なくなる可能性があることを表明しておきたい。
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Causes of Carryover |
報告を予定していた、第16回国際功利主義学会アメリカ・シカゴ大会(2020年7月29日-8月1日)が新型コロナにより次年に延期となり、予算計上していた外国旅費等の支出機会を逸してしまったため。 2021年度については、2020年度の執行できなかった主要な支出項目の「外国旅費」を、支障が無ければ2022年早期(1-3月期)での開催を準備している国際功利主義学会イタリア・ローマ大会での報告のため旅費として支出する計画である。代表者はすでに大会関連の連絡サイト(https://tinyletter.com/ISUS)に登録済みである。なお、当該国際学会は2019年から既に2度の延期を余儀なくされているので、欧米、特にイタリアでの新型コロナの今後の感染状況によっては開催時期が更に延期される可能性があることを記しておきたい。 上記以外については、成果発表を目指してしている既に10回開催している研究集会(次回と次々回は2021年7月18日、9月19日に開催確定。以降年度内に最低3回の予定)の開催と運営に関わる諸経費での支出を計画している。
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Research Products
(5 results)