2022 Fiscal Year Research-status Report
プロト・ポリティカル・エコノミストとしてのJ.バトラー:自然神学・利己心・蓋然性
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19K01571
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
有江 大介 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 名誉教授 (40175980)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 哲人 松山大学, 経済学部, 准教授 (70735828)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バトラー主教 / イングランド国教会 / 商業社会 / 利己心 / 蓋然性 / 自然神学 / 功利主義 / 経済人 |
Outline of Annual Research Achievements |
18世紀ブリテン思想史と社会的影響力の両面において枢要でありながら、今日、本国でも忘れられた神学者、思想家となったJ. Butler(1692-1752)を再発掘することが本科研費研究の課題である。 期間を延長した2022年度も前年に引き続き、「バトラー研究会」をコロナ禍のためZoomにて以下の5回開催した。第15回(2022年5月1日)①報告「18世紀イングランドにおける商業社会と宗教:バトラー、ペイリー、プリーストリー」松本哲人(松山大)、②報告「リードの思想形成とバトラー」長尾伸一(名古屋大・名)、第16回(7月10日)①報告「ウィストン『地球の新理論』(1696)のニュートン主義自然神学」中野安章(慶応大)、②報告「ジェームズ・マーティノゥの神学的倫理学―19世紀イギリスのユニテリアニズムの変容」舩木恵子(武蔵大)、第17回(9月25日)①報告「Political EconomyはTheologyに還元できるか:WatermanからOslingtonまで」有江大介(横国大・名)、②共同英文論文集の執筆者協議、第18回(12月18日)①報告「ヴィクトリア期のバトラー受容:ニューマンとアーノルド」小田川大典(岡山大)、②討論「有江報告を承けて:バトラーは、なぜ、経済思想に影響したのか」大久保正健(元・杉野服飾大)、第19回(2023年3月12日)①報告「マルサスの初版『人口論』(1798年)の弁神論を中心に考察する」森岡邦泰氏(大阪商業大)、②共同英文論文集の執筆者協議。 以上の研究活動を通じて、共同英文論文集の出版契約を海外出版社と結び2023年中の出版を目指し原稿の最終調整に入った。ただし、コロナ禍により研究代表者が報告予定であった国際学会が引き続き中止となった。また、同様に、次の日本語論文集による成果発表のスケジュールがさらに1年延期を余儀なくされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に示したように、第15回から19回に至る5度の研究集会を開催し本科研費の研究課題に直結する報告、討議を行うことができた。その結果、まず、研究課題に関する未訳の古典的研究書の共同翻訳原稿の最終調整を終えて候補出版社との協議を重ねつつ、刊行に向けて種々の出版助成プログラムに応募している。英文共同論文集は原稿がほぼ出そろったので、外国出版社との出版契約を結び、出版実現に向けて最終段階に入った。 日本語共同論文集にも繋がる継続的な研究集会をZoomにより実施できた。ただ全体として、コロナ禍により2022年度内での完遂が出来ず、期間延長が必要となった。 技術的部分では、デジタル化が急速に進む出版事情によって、共同研究の成果の取りまとめに際し英文、和文とも従来とは異なる形での論文の準備、形式や長さなどの変更を求められ、結果的に全体の進捗が遅れた。これが「おおむね」と評価する理由の一つである。 共同研究活動自体については、研究集会を5回持つことが出来た一方で、これもコロナ禍によって、計画していた外国人報告者を招聘することが出来なかった。また、内容的にも数量的にも本来中核となるべき若手研究者層は、学務の煩雑化や遠隔授業の拡大による教育負担の予想外の拡大等により必ずしも十分な研究時間が確保できなかったと推察される。これが、「おおむね」と評価するもう一つの理由である。 以上のような状況に加えて、当初計画していた外国学会での報告と討議、日本開催の国際学会への報告と討議、代表者による英国の大英図書館やダラム大学での資料調査等は前年度に引き続き不可能となってしまった。年度末の2月、3月に、研究会メンバーの2名が別枠の基金でイギリスとアメリカとを短期間訪問した際に、本研究課題に関わるに資料調査をかろうじて行った。これらも不可抗力とはいえ「おおむね」とする理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、コロナ禍によってさらに1年間の研究期間延長が認められたことを奇貨として、上記の研究計画のうち、共同翻訳本(E. S. Mossner, Joseph. Butler and the Age of Reason, 1936)の刊行の実現のための研究成果公開促進費への応募や各種補助金等の獲得に引き続き努力する。次に、共同研究の成果発表のため、各執筆者から提出された英文原稿をもとに研究代表者を主たる編者とした3人の共同編集により、「Bishop Butler: A Preacher for 18th Century Commercial Society」(仮題)と題する英文共同論文集の出版契約を外国出版社と締結したので、その実現に向けて尽力する。 さらに、コロナ禍によって遅延した和文共同論文集の編集については、2023年度中に原稿を集約し国内出版社との出版契約の締結を目指す。その際、元になる英文論文集用原稿を日本人研究者用に修正する手順を考慮し、原稿自体は2023年8月末日を第1次締め切りとし、2023年度の科学研究費の研究成果公開促進費への応募を計画している。 これらを念頭に、既に19回開催している研究集会を少なくとも今後4回は2023年度中には開催する。ただし、本共同研究で開拓した18世紀知性史におけるキリスト教や自然神学の役割の研究を今後の若い世代に引き継ぐために、研究集会のテーマは18世紀イングランドのバトラー主教にこだわらず、思想、時代、地域、人物、などを幅広く持つ形で開催する計画である。 以上に併せて、研究代表者、分担者をはじめ本研究グループの各自が完成原稿をもとに本年度の関連する諸学会で当該課題について報告することを目指す。これらにより、弱点であったと言われる知性史・思想史におけるキリスト教の役割についての我が国の研究状況に一石を投ずることを目指したい。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた最大の理由は、過年度同様に、成果発表の一環として研究代表者が外国旅費にて参加予定であった第16回国際功利主義学会(ISUS:米国イリノイ大学シカゴ校にて2021年7月に開催予定)が、既に2年延期のあと結局は中止になり、さらに2022年6月以降にイタリア・ローマ大学での開催に延期・変更したものが、再々度中止となってしまったためである。今2023年度も現段階で不確実である。そのため、研究集会でのゲストによる報告への知識提供や研究補助への謝金、文具・プリンター用インク等の消耗品等への少額支出にのみ補助金が充てられた。結果として、執行されなかった外国旅費部分が次年度使用分の大部分として残った(次年度使用分(直接経費):1,025,566円)。 そうした状況下で、2022年度において既に科学研究費の趣旨に最も適合する代替的な支出として、英文論文集という形での成果発表を円滑に進めるための英文校閲費に補助金の多くを充てることとしていた。しかし、コロナ禍の上記の諸事情により全体の計画が遅延する中で、この補助金の執行計画が2023年度に引き継がれることとなった。具体的には、学術論文に対する定評のある英文校閲サービスに10~12本ほどの論文を委託することで80万~90万円前後を支出することが、今年度の使用計画の主たる内容となる。残りは昨年度までのような通常の支出に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)