2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K01575
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
松山 直樹 兵庫県立大学, 国際商経学部, 准教授 (80583161)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | マーシャル / 需給均衡理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は資料収集と文献考証を中心に研究プロジェクトを遂行し、二度の研究報告を行った。2019年度前半の研究成果をSGCIME研究会において報告した。そこではアルフレッド・マーシャルがいかにしてオーギュスタン・クールノーの経済学方法論を考慮していたのかという、これまで全く検討されてこなかった極めて基本的な論点をめぐって、マーシャルの手沢本であるクールノーの『富の理論の数学的原理に関する研究』(1838年)を参考にして研究成果を報告した。現在、質疑応答を経て得られた知見等を踏まえて論文の加筆修正をおこなっている。/2019年度後半は、目に見えない現象を可視化するという近代科学の特徴がケンブリッジ経済学にも明確に見出すことができるという点をめぐって文献考証をおこない、その成果をJapanese Society in Cambridgeにおいて報告した。具体的にはケンブリッジ大学に学んだトマス・ロバート・マルサス(1766-1834、ジーザス・カレッジ所属)とマーシャル(1842-1924、セント・ジョンズ・カレッジ)がそれぞれ貧困状態と商品の市場価格を数学的に基礎づけられた図式的表現として展開することに成功しており、それらが道徳科学トライポスおよび経済学トライポスの試験問題に採用され、少なくともケンブリッジでは彼らの科学的な経済分析が比較的速やかに普及していたであろうことを指摘した。/さらに現在、マーシャルの考案した需給均衡分析の普及過程について、彼の主著『経済学原理』初版(1890年)の出版後一年以内に英国の国内外で発表された書評が、その著作に含まれるどのような論点に注目して論評していたのかを定量的に考察したものを論稿にまとめている。/このようにして2019年度は科学史の観点からアルフレッド・マーシャルの需給均衡理論の意義を評価する研究を展開した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は研究プロジェクトに不可欠な一次資料の収集・文献考証を行い、その成果を二度の研究報告として発表した。当初の研究計画に従い今年度は需給均衡理論の展開に関する基礎的な分析を行い、その成果を速やかに研究報告した。そのため概ね順調に研究プロジェクトが進行していると言える。/他方で、需給均衡理論が成立した背景として19世紀イングランドの科学的方法論をケンブリッジ大学のウィリアム・ヒューエルを中心に研究することが今年度の研究計画のひとつであった。この点は資料収集は概ね終えることができているため、来年度以降も研究計画を継続して文献考証をおこない研究計画を遂行していく。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度以降も資料収集および文献考証を中心に研究プロジェクトを遂行していくが、2020年3月頃から世界規模でコロナ禍が深刻化しているため、今後数年間は従来のように国内外で継続的に資料調査を実施していくことが難しいことが予想される。/2020年度より新たに着手する予定だったフレミング・ジェンキン(1833-1885)の経済分析に関する資料調査を実施できないだろう。しかしジェンキンの主要著作は大学図書館の文献貸借サービス等を利用しながら入手できると考えられ、工夫をしながら文献考証をおこなっていく。/したがって本研究プロジェクト全体の遂行に著しい遅れが生じないように、収集済みの研究資料を中心にして文献考証を着実におこなうと共に、需給均衡理論が成立した背景として形成されていたであろうイングランドにおける研究者ネットワークについても手元にある資料を活用しながら研究を進めていく。
|