2021 Fiscal Year Research-status Report
Comparative intellectual history of Hume and Rousseau: An approach from the synchronic perspective
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19K01577
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
壽里 竜 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (20368195)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヒューム / ルソー / マンデヴィル / 啓蒙 / 奢侈 / 反啓蒙 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画では海外のアーカイブでの研究を検討していたが、いまだにコロナ禍が収まらないため、主として文献調査や論文執筆を中心に研究を進めてきた。2021年7月には、第47回国際ヒューム学会(オンライン)において"Two Epicureans on Happiness: How Hume read Rousseau's Julie"というタイトルで報告を行なった。これは、本来は2020年度に報告が決まっていたが、コロナにより一年延長の上、オンライン開催となった大会での報告であった。内容は、ヒュームが最も高く評価したルソーの著作である『新エロイーズ』における二つのエピキュリアニズム概念を検討し、そこからヒュームとルソーの共通点を探ろうとするものであった。ルソーについては文明批判の側面が強調されることが多いが、『新エロイーズ』に描かれている理想的な共同体であるクラランの生活は、必ずしも禁欲的な清貧の思想を説いているわけではなく、一定程度の文明・経済水準を享受することが肯定的に評価されている。このことは、ヒュームの経済論が本格的に展開されている『政治論集』ではなく、より初期の『道徳・政治論集』に示されている、少人数の賢者による自律的な趣味の洗練という理想と共通するものであることを指摘した。 2022年度に公刊予定の別の研究成果として、18世紀後半の奢侈論の概観がある。ヒュームとルソーのみに限定しているわけではないが、マンデヴィル、モンテスキュー、アダム・ファーガソン、エルヴェシウスなど、英仏の多様な思想家群による奢侈論争の展開の中で、ヒュームの経済論・奢侈論と、とりわけ後期ルソーの著作(『ポーランド統治論』や『コルシカ憲法草案』など)との関連を指摘している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナの影響で長期間にわたり国外に出ることができず、本研究課題にとって非常に重要な海外(イギリス、フランス、スイスなど)におけるルソー関連のアーカイブでの調査ができていないこと、国外の学会における意見交換の場が大幅に制限されていることが研究課題の遂行を遅らせていると言わざるを得ない。加えて、コロナ対応による授業形態の変更や学会業務の増加に伴い、当初予定したように研究時間が確保できていない。以上はすべて申請時に予測不可能な事態であった。 2022年度は採択時の研究期間の最終年度に当たるが、ようやく感染状況がやや落ち着いていることに鑑み、さらには2023年度に在外研究を予定していることもあり、もう一年期間を延長する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上に述べたように、幸い2023年度には勤務校より在外研究の機会を得ることができた。在外研究中は、本研究課題に専念できる環境が整うとともに、コロナ禍で制限されていた海外の研究者との意見交換やアーカイブでの調査を行うこともできると思われる。コロナの感染拡大状況によっては引き続きさまざまな制約下での研究活動を強いられる可能性はあるが、これまでの遅れを取り戻しつつ、コロナ感染状況に柔軟に対応しながら研究課題を遂行していきたい。
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Causes of Carryover |
前述の通り、コロナ感染拡大により海外渡航が禁じられており、当初の研究計画で支出項目のうち多くを占める予定だった旅費が未使用となっている。申請時に対面で開催予定だった国際学会も、1年間の延期ののちにオンライン開催となった。最近では海外渡航そのものは禁じられていないが、帰国時の待機期間や感染リスクを考えると、いまだに海外での資料調査と国際学会での研究発表はハードルが高い。このような研究課題遂行の遅れを取り戻しつつ研究計画を柔軟に再調整するためにも、本研究遂行に認められた資金を有効活用するためにも、研究期間の延長が必要と思われる。
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Research Products
(1 results)