2022 Fiscal Year Research-status Report
Comparative intellectual history of Hume and Rousseau: An approach from the synchronic perspective
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19K01577
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
壽里 竜 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (20368195)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヒューム / ルソー / 啓蒙 / 反啓蒙 / マンデヴィル |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度の研究成果として論文 'Voila un siecle de lumieres!': Horace Walpole and the Hume-Rousseau affair が History of European Ideas に掲載された。この論文は、ルソーを揶揄する偽名の手紙を執筆したホレス・ウォルポールの視点から、文筆家が大きな社会的影響力をふるうようになる当時のコンテクストにヒュームとルソーの諍いを位置づける研究である。これまで両思想家の諍いについてはさまざまに研究されてきたが、ウォルポールが残した膨大な書簡(と著作)を中心に据えたものはなかった。ヒュームとウォルポールの書簡には、文明社会とそこにおける思想家の役割についての認識に隔たりが見られること、ウォルポールにはむしろルソーに接近する側面があることを明らかにした。 本研究課題の研究成果の一つである、ヒュームとルソーを含む18世紀奢侈論の概観についての論文は、欧米の研究者が中心の執筆者による編著として当初は2022年度刊行予定だったが、一部の執筆者の原稿提出遅れにより、刊行は早くとも2024年となることが分かった。 また2022年度は、直接的な影響関係のないヒュームとルソーの思想を比較する一つの結節点として、両者に影響を与えたバーナード・マンデヴィルに関する資料・文献調査を並行しておこなった。 加えて、2022年度末からの在外研究に向けて、イギリスにいる研究者との連絡を密におこない、在外研究時の研究活動を本格化させるための準備作業にも取り掛かった。 2022年度末から在外研究のために渡英し、十分な研究時間を確保でき、またコロナも収束に向かっていることもあり、2023年度にはイギリスを含む欧米の研究者との交流や資料調査を加速させることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
引き続きのコロナ禍により、海外での資料調査や学会発表ができず、2022年度は予定された研究計画を十分に遂行できたとは言い難い状況であった。とはいえ、国内で実施可能な資料の読解、文献調査などを引き続きおこなった。2022年度までに国際学会で報告した内容を複数の論文として英語の査読付き国際誌に投稿したが、結果は思わしいものではなく、再投稿するには大幅な書き直しが必要である。 まずはコロナにより大学・学会関連の業務が大幅に増えたこと、さらには海外での資料調査・国際学会での報告ができなくなったことによる影響はかなり大きい。 とはいえ、2022年度末からの在外研究により、イギリスでの資料調査や研究者との交流の機会は増えるものと思われる。それによって研究計画遂行の遅れを取り戻せるものと期待しているが、場合によっては一年間の期間延長を申請することも検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度末より渡英し、ケンブリッジ大学歴史学部のvisiting scholarとして一年間、滞在する。ケンブリッジ大学は政治思想史研究の一大拠点であり、ヒュームやルソーを専門とする研究者も数多く在籍している。あいにく2023年度中の国際学会への報告申し込みはすでに締め切られているため国際学会での報告は難しいが、ケンブリッジ大学でのセミナー報告の機会は残されている他、イギリス国内やヨーロッパのアーカイブでの資料調査も可能である。2020年度より見舞われたコロナ禍によって生じた遅れを、この在外研究の機会を生かして取り戻したい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、1)引き続くコロナ禍により学内・学会業務が激増し、2)海外での学会報告・資料調査が行えなかったという二つの理由による。これに対する新たな使用計画として、2022年度末からの在外研究で学内・学会業務から解放され研究時間が大幅に増えること、イギリスに滞在することで現地の研究者との交流が増え、また資料調査も行えることから、これまでの遅れを取り戻すことができる。ただし、本研究課題が予定されていた5年間のうち、3年間にわたるコロナ禍の影響は大きく、場合によっては一年間の研究期間延長を申請することも検討している。
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Research Products
(1 results)