2020 Fiscal Year Research-status Report
動学的因子モデルにおける構造変化分析手法の開発と応用
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19K01586
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
山本 庸平 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (80633916)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 分散構造変化 / 動学的因果効果 / 構造ベクトル自己回帰モデル / 大いなる安定期 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、以下のような実績を挙げた。 課題A「個別ショックの分散構造変化分析」においては、係数と分散の構造変化分析の手法を開発した論文、構造変化などに起因する経済予測モデルのパフォーマンスの変化を把握するための論文を、国際学術誌に掲載した。また、2019年度に本務校のワーキングペーパーとした「The Great Moderation: Updated Evidence with Joint Tests for Multiple Structural Changes in Variance and Persistence」につき、台湾国立政治大学の経済セミナー(オンライン開催)で発表し、参加者から有益な助言を得た。また、既存の関連文献をより広範に調査することで、米国経済の「大いなる安定期」の要因を分析した既存成果の中での本研究の計量経済手法面での新規性につき明らかにした。 課題B「分散の構造変化を用いた因果効果の識別」においては、2019年度に本務校のワーキングペーパーとした「Identifying Factor-Augmented Vector Autoregression Models via Changes in Shock Variances」を国際学術誌に投稿した。その過程で、計量経済モデルの定式化について検定手法につき、識別条件の検定統計量および過剰識別検定を新たに開発し、その結果を追加した。また、本研究で提案する計量経済手法を多数の金融資産データを用いて非伝統的金融政策の因果効果分析に適用したところ、非伝統的金融政策のイールドカーブへの効果が山形(hump-shaped)であること、中央銀行が経済主体より情報優位にあるという情報効果の存在を検証し、それらの結果を追加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題Aは、2019年度末から2020年度にコロナウイルス感染症対策の影響で学会発表などの実績が当初予定を下回るものの、課題の遂行は順調に進捗している。2019年度にワーキングペーパーとして纏めた一次成果を2020年度には国際学術誌に投稿し、好意的な反応と軽微な改訂要求を受け、既存文献調査等につき追加作業を遂行し再投稿を行った。なお、2020年度は出張による対面での学会発表などの実績が当初の予定を下回ったものの、国際学術誌掲載に向けての作業はほぼ予定通り進んだ。2020年度末にはかかる軽微な改訂結果を審査中であり、2021年度における研究課題の達成を目指している。よって、進捗度は90%程度であると考えている。 課題Bは、コロナウイルス感染症対策による授業準備負担の増大と生活環境の急変により、進捗速度は当初想定していたよりも比較的緩やかなものに留まった。具体的には、2019年度に国際学術誌に投稿したワーキングペーパーにつき、2020年4月に非常に好意的ではあるものの大掛かりな改訂要求を受けた。改訂作業にあたっては、外的環境変化により研究実施に掛ける時間が予定を下回ったものの、作業を効率化するために政府機関で勤務しているエコノミストに共著者としての参画を依頼して効率化を図った。その結果、改訂作業を10ヶ月程度で遂行し2021年2月に再投稿を行った。2020年度末はかかる大掛かりな改訂結果を審査中であり、その結果を受けて2021年度の研究を進捗させる。よって、進捗度は70%程度であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
課題Aについては、現在投稿している国際学術誌の反応を待ち、最終的な課題の完遂を図りたい。加えて、本研究成果を産業別の生産指数などに応用することで新たな側面から研究テーマを深掘りする予定である。課題Bについては、引き続くコロナ禍で対面での打ち合わせや研究発表の機会などが充分に持てない懸念があるものの、コンピュータ等の機器の購入による作業の効率化や共同研究者との連携を強めることで国際学術誌の反応に的確に対応し、課題の達成に向けて努力したい。
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Causes of Carryover |
理由は、コロナウイルス感染症対策のため当初予定していた出張が実行できなかったため。使用計画は、ラップトップPCの購入およびRAの雇用などにより研究環境の柔軟化および効率化を図り、研究計画の遂行を目指す。
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