2020 Fiscal Year Research-status Report
インドの小地域住民全数データを参照基準にした途上国統計制度のミクロレベル分析
Project/Area Number |
19K01587
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
岡部 純一 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (70204013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 治平 神戸大学, 農学研究科, 教授 (40204557)
池島 祥文 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (20607923)
坂田 大輔 神奈川大学, 経済学部, 准教授 (70734359)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 統計制度 / 農村統計 / インド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、インドの統計制度の姿を制度末端の小地域(村落) データをミクロレベルで分析することによって根底から明らかにすることである。 2020年度は新型コロナのパンデミックによりインドとの相互渡航が不可能となった。しかし、前年度末の2020年3月に本科研費プロジェクトメンバーがインド に渡航して、インド側学術団体: Foundation of Agrarian Studies(FAS)との研究打ち合わせで、2020年度以降、インドの村落レベルGISの統合データベースを構築するプロジェクトを追求することが決定。その後、メール・遠隔会議等による共同研究の進行により、2020年12月にはFASと横浜国立大学との間でプ ロジェクト協定を締結した。その結果、タミル・ナドゥ州の一村落(Nagapattinam県のPalakuruchi村)を選定し、その村落の地籍図と土地台帳の統合的なGISデー タベースを構築するプロジェクトが開始された。Palakuruchi村はFASが2019年に村内世帯を全数調査した村落。全世帯員のデータベースを参照基準に各種検証が可能である。 現在、インドでは地籍図と土地台帳の電子化が進行している。そこで、本科研はFASと協力して(1) 当該村落の地籍図のレイアー、(2) 当該村落のリモートセンシング画像のレイアー、(3) (1)と(2)を現地測量によって調整した画像のレイアー、という主に3つのレイアーから構成されたGISデータベースを構築した。(3)のレイアー上の土地区画ポリゴンには土地台帳の土地所有者情報がそれぞれ紐づけられている。したがって地籍図関連情報の所有農地-土地所有者 -FASデータベ ース世帯情報がリンクされ、この村の土地所有構造がミクロレベルで分析できるようになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は新型コロナのパンデミックによりインドとの相互渡航が不可能となった。そのため相互渡航による国際共同研究は想定外の制約を受けた。このパンデ ミック下ではメール・遠隔会議による共同研究が中心となった。そのため、村落の地籍図と土地台帳の統合的なGISデータベースが構築されても、そのデータの正確性や疑問点を当該村落に直接赴いて調査・確認する作業は不可能であった。 しかしそれにもかかわらず、インドとの相互訪問なしに、FASとの間で議論と予備研究が進み、2020年12月にFASと共同プロジェクト協定が締結されるまでに漕ぎつけた意義は大きい。その結果、村落レベルGISの統合的データベースを構築するプロジェクトが年度末にかけてほぼ完成に近い状態にまで進 展した。そのことは、パンデミックによる相互渡航不能による国際共同研究の想定外の制約を補ってさらに余りある、計画を上回る研究の進展と自己評価できると考えている。 したがって、新型コロナのパンデミックによ各種制約と、村落レベルGIS統合的データベース構築プロジェクトの計画を上回る進展という相反する両評価を勘案すると、結局のところ、本研究課題は「おおむね順調に進展している」と見のが妥当と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
Palakuruchi村の地籍図と土地台帳を統合したGISデータベースの構築作業はほぼ完成に近づいているが、この統合的GISデータベースの正確性と利用可能性について、2つの側面から基礎研究を行う必要がある。第1に、村落の地籍図等の正確性と利用可能性について基礎研究が必要である。地上測量に基づく地籍図関連空間データとリモートセンシング画像との間に多少齟齬があり、齟齬の程度とその理由について基礎研究が必要である。第2に、地籍図関連空間データ上の各土地区画にリンクした土地台帳の土地所有者情報の正確性と利用可能性を評価するのが大変むずかしい。とりわけ土地台帳の土地所有者情報をFASの村内世帯全数調査データベースと紐づけようとするとなかなか錯綜しているため膨大な作業となり容易にはマッチしないからである。したがって村落土地台帳の正確性と利用可能性についても基礎研究が必要である。 それら基礎研究に基づいてインド農村社会変動についての応用研究を推進する必要がある。FASもこの研究に興味を持っているので両者の共通の関心について国際共同研究を展開する必要がある。 Palakuruchi村のこの統合的GISデータベースを中心とした研究だけでなく、FAS関係研究者と共に別の共同研究を進める可能性も出てきたので、それも推進する必要がある。研究協力者・宇佐美好文氏とFASとの村落の女性労働に関する研究、研究分担者・杉本大三氏の牧畜センサスデータを利用した村落牧畜業の研究などがそれである。それらの研究についても引き続き推進する。
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Causes of Carryover |
新型コロナのパンデミック下でインド等への渡航が不可となり、当初予定していた外国出張旅費の使用が困難となった。それに代わってインド側共同研究機関・Foundation for Agrarian Studies (FAS)とプロジェクト協定を締結し、遠隔会議を通して、Tamil Nadu 州Palakuruchi村を対象としたGIS統合データベースの構築を開始した。このプロジェクトはまだ業半ばであり、そのためブロジェクトの成果物の購入はまだ一部である。まだ追加購入を予定している。 したがって、次年度使用額の使用計画は以下のようになる。(1)インド等への渡航が可能になり次第、外国出張旅費とその関連経費を使用する計画である。(2) たとえ外国出張旅費の使用が困難となった場合でも、Palakuruchi村対象GIS統合データベースの構築を拡張しそのブロジェクトの成果物の購入に使用する計画である。
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Remarks |
上記の2つのWebページは本研究のプロジェクトメンバーの意向に沿って、国際共同研究の相手方機関であるFoundation for Agrarian Studiesが作成した研究内 容又は研究成果に関するwebページである。
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Research Products
(9 results)