2019 Fiscal Year Research-status Report
多変量実数和分過程におけるセミパラメトリックな推測理論の構築とその応用
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19K01590
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
生川 雅紀 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (30588489)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 実数和分過程 / 長期記憶 / 多変量時系列 / セミパラメトリック推定 / Taper |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,本研究課題の基盤となる,非定常な長期記憶時系列を含む多変量時系列に対する最大効率Taperを組み込んだ多変量局所Whittle法に関して,いくつか修正を行って確立することにまず注力するとともに,新たな方向性としてパラメトリックなWhittle推定量が構築できることを示し,既存のTaperを用いた同様の推定量よりも漸近的に効率的となりうることを見出した。パラメトリックモデリングが適切な場合にはより早い収束速度の推定量となるため,本研究に追加的な意義がもたらされた。さらに,数値シミュレーションによる平均二乗誤差の観点から単変量との比較を行い,多変量の枠組みが実際に多くのケースで優れていることも明らかにした。以上の研究成果について取りまとめ,学術誌へ投稿するに至った。次に,上記で構築された多変量局所Whittle法において,実数共和分関係を取り込めるよう制約的な仮定を緩めることに取り掛かり,単一方程式モデルによって実数共和分関係が表現されている場合には,既存研究のアプローチも利用することで,実数和分パラメータと共和分ベクトルをセミパラメトリックに同時推定できうることを導き,さらに,得られる推定量の漸近的な性質に必要となる条件の検討も行った。また,本研究課題とも密接に関わっている高次元長期記憶時系列に対するセミパラメトリック法において,多変量局所Whittle法を取り入れて進展させた成果を学会にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最大効率Taperを用いたピリオドグラムに基づく多変量局所Whittle法に修正すべき箇所が見つかり,その確立に手間取った一方で,パラメトリックな多変量Whittle法への発展性や高次元長期記憶時系列への応用など予定にはなかった展開を見せたためである。また,実数和分パラメータと共和分ベクトル推定量の数値シミュレーションにも十分には取り組めず,当初の研究計画からすると少し遅れていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
多変量時系列において実数共和分関係が単一方程式モデルで表されている想定の下で,最大効率Taperを取り入れた多変量局所Whittle法の拡張によって得られる実数共和分パラメータと共和分ベクトル推定量のパフォーマンスを定常・非定常の実数共和分関係が存在する場合の数値シミュレーションから調べるとともに,各推定量の理論的性質の導出やその際に必要な条件の整備に取り掛かり,セミパラメトリック推定法の確立を図る。
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Causes of Carryover |
主に数値シミュレーションを行うために必要となるパソコン等の購入を今年度の進捗状況に応じて見送っており,また,年度末に予定していた打ち合わせ等が情勢によって軒並みキャンセルとなったためであり,次年度の研究費と合わせて当初の計画を調整しつつ使用する予定である。
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