2020 Fiscal Year Research-status Report
An Empirical Study on Inefficiency in Production of Japanese Non-manufacturing Firms
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19K01596
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
小川 一夫 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (90160746)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 技術的非効率性 / 確率的フロンティア生産関数 / 真の確率効果モデル / 追い貸し / 正規雇用 / 非正規雇用 / 設備投資 / 研究開発投資 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、中小企業庁が実施した『中小企業実態基本調査』のパネルデータ(2009年~2018年)を用いてわが国の中小製造企業の技術的な非効率性(technical inefficiency)について実証的な分析を行った。具体的には、正規雇用、非正規雇用、資本ストック、原材料の4つの生産要素を投入物とするstochastic frontier 生産関数を推定することによって個別企業の技術的非効率性を求め、その特徴を明らかにした。推定方法は、企業の異質性と技術的非効率性を識別できるtrue random effects modelである。 主要な結果は以下の通りである。まず、労働投入を正規雇用と非正規雇用に分けず、企業の異質性と技術的非効率性を識別しない伝統的なstochastic frontier生産関数を推定した場合には技術的非効率性が過大に推定される傾向にあることがわかった。第二に、非効率的な企業は、規模が小さく、非正規雇用の割合が高く、企業パフォーマンス(営業利益率、経常利益率、限界q)が低いことも明らかになった。また、負債比率で測った財務状況が悪いにもかかわらず、低い借入利子率に直面していることもわかった。これは金融機関によって非効率な企業に対して追い貸しが行われていることを示唆している。 さらに非効率的な企業は設備投資やR&D投資を実施する割合が低いこともわかった。技術的な非効率性を減少させるためには、設備投資の収益性を高め、財務状況を改善することによって設備投資を活発化させ、生産性を高めることが重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
中小企業庁が実施した『中小企業実態基本調査』のパネルデータ(2009年~2018年)を用いてわが国の中小企業の技術的な非効率性(technical inefficiency)について実証的な分析を行っているが、分析作業自体は概ね順調といえる。技術的非効率性を計測するためのデータベースが完成し、そのデータベースを用いて昨年度はもっぱら製造業を対象にしてstochastic frontier production functionの計測に着手し、企業の属性と技術的非効率性の関連について分析を加えてきた。このようにモデルの構築と推定については概ね順調に推移している。 しかし、新型コロナ感染症蔓延のために、これまでに得られた研究成果について国内外で発表する機会がなく、他の研究者からのコメントに基づいたフィードバックが得られず論文を改善するというステップまでには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、『中小企業実態基本調査』のパネルデータ(2009年~2018年)から作成されたデータベースを用いて、非製造中小企業の技術的非効率性について実証分析を進める予定である。このデータベースでは製造業を軽工業、重工業、機械産業に分類しており、非製造業も建設業、情報通信業、運輸業、卸売業、小売業、不動産業、サービス業に分類している。特に、従来からサービス業は生産性が低い業種と位置づけられており、この点についても技術的非効率性という視点から分析を加える。さらに各業種ごとに技術的非効率性を計測し、非製造業と製造業の非効率性を比較することによって業種の特徴を明らかにしていきたい。また、技術的非効率性の計測結果に基づいて、効率性を高めるために必要な施策についても政策的含意を導き出す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の拡大によって,研究活動によって得られた成果を国内外で報告する機会がなかった。また、他の研究者を招聘して意見交換する機会にも恵まれなかった。その結果、旅費、謝金への支出がなかった。今年度は繰越額と合わせた金額を用いて研究成果を報告書として纏めるための諸支出、そして研究報告を行うための旅費に充当したい。
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