2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K01606
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
友田 康信 広島大学, 社会科学研究科, 教授 (30437280)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大堀 秀一 関西大学, 総合情報学部, 教授 (70378959)
DAVIS COLIN 同志社大学, 国際教育インスティテュート, 教授 (70432557)
紀國 洋 立命館大学, 経済学部, 教授 (90312339)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 環境規制 / 環境投資のインセンティブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題「環境規制と企業の環境技術開発に関する経済理論研究」は、環境規制導入とそれに対応する企業の技術開発に関する経済理論研究である。この研究プロジェクトによる研究成果の一部として,2019年度,我々は以下の論文を発表した。 紀國洋,友田康信,大堀秀一「企業による自主的な環境投資のインセンティブ」経済学研究62(2), 7-17. この論文は,環境税という間接的な環境規制を導入するタイミングがすでに決まっている際に,企業が自主的に環境汚染投資(技術開発)を行うインセンティブについて,研究した。このモデルには,独占による死荷重と,環境に対する外部不経済という2種類の経済的歪みが存在するのが,大きな特徴である。つまり,もし企業が環境税の導入を待ってから環境投資を行うと,政府は環境税という1つの政策手段でこれら2種類の経済的歪みに対処しなければならない。研究の結果は,以下である。 もし企業が環境税導入に先駆けて自主的な環境投資を行うと,環境投資は埋没するため,政府は死荷重軽減のみを考え,低い環境税を導入する。これは企業の利潤を高めるので,企業には自主的な環境投資を行うインセンティブがある。そして,企業の自主的な環境投資は経済厚生上望ましいことが多い。しかし,もし企業が環境投資のタイミングを早めるために負担する追加的な費用が高ければ,企業は自主的な環境投資を行わず,それが経済厚生上望ましい場合が多い。しかしながら,企業の環境税回避の誘因が強すぎるため,企業による自主的な環境投資が経済厚生上望ましくない均衡も存在することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この科研課題は2つのプロジェクトからなっている。第1プロジェクトに関係する研究について,上記「研究実績の概要」に記載したように,昨年,我々は1本の論文を発表した。一方,第2プロジェクト「最適な環境規制導入スピードに関する動学的理論研究」について,研究はやや遅れ気味である。 よって,区分(2)おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後,本研究課題で設定した2つのプロジェクトそれぞれについて,研究を進めていく予定である。 プロジェクト1について。不完全競争市場において,政府の環境政策が企業の戦略的行動に与える影響を,引き続き分析していく。より具体的に,我々は製品に課せられる廃棄税や,ディポジット・リファンド・システムの導入のような環境政策が,企業の製品開発,特に製品の耐久性にどのような影響を与えるのか,理論的に分析している最中である。 プロジェクト2について。企業がプロセスイノベーションを行う内生的成長モデルにおいて,政府が設定する環境規制の強化スピードに関する研究を行う。企業の環境プロセス・イノベーションのスピードのコントロールを試みる政策として環境規制を解釈することは新しい視点であると我々は考えており,この研究を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当該年度の実支出額で若干の端数が出たため,次年度に繰り越して使用する予定である。
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