2019 Fiscal Year Research-status Report
Environmental economics for persuasions: Theory and evidence from a field experiment
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19K01620
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
横尾 英史 一橋大学, 大学院経済学研究科, 講師 (80583327)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 廃棄物管理 / インドネシア / 説得的コミュニケーション / メッセージ / ランダム化フィールド実験 / 計量経済学的分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
アジアの開発途上国が環境問題の発生源となっている。伝統的な環境経済学では直接規制や環境税を用いて個人の行動変容を実現し、最適な環境水準を達成することを目指してきた。しかし、途上国においては規制の遵守・監視が容易ではなく、税の徴収はさらに困難となる。本研究では「行動変容を促進するメッセージ」を手段とした環境政策を理論・実証の双方から研究する。国際協力機構(JICA)がインドネシアで実施したプロジェクトを事例研究の対象とし、継続的に調査を行う。より具体的にはインドネシアの家庭から排出される廃棄物の不法投棄・燃焼を減らすことを目的として、有料の廃棄物収集サービスへの加入者を増加させる施策について検討する。説得的なメッセージやそれを用いたコミュニケーションの効果を検証し、そのメカニズムを明らかにする。 2019年度はインドネシア・パレンバン市で追加的な調査を行い、データ収集を行った。これは2016年からJICAが実施したプロジェクトの対象地での継続的な調査である。そして、追加収集したデータを加えた計量経済学的な分析を実施した。具体的には、廃棄物収集サービスへの加入契約が説得的コミュニケーションによって増加するかを「コミュニケーションの内容」、「メッセージの受け手の家庭の特徴」、「送り手の勧誘員のパーソナリティ」、さらにはこれら三つの要素の組合せ(マッチング)による影響として整理し、検証した。分析結果を論文化し、国際学会での口頭発表に申し込んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りに調査を実施できた。これをもって論文化のために必要なデータ収集を一区切りすることができた。対象地域の約750世帯の有料廃棄物収集サービスとの契約の有無について、サービス提供者との連携のもとでデジタル・データ化してきたが、データセットがカバーする期間を延ばすことができた。これにより、収集サービスへの契約という意思決定を客観的かつ長期的に把握することが可能となった。 また、計量経済学的分析を予定通りに実施できた。さらに、「メッセージを活用した環境配慮行動の促進」や「対面でのコミュニケーションによる環境配慮行動の促進」を研究対象とした先行研究のレビューを遂行した。その結果、先行研究ではメッセージの送り手となる勧誘員の属性が受け手の行動変容に与える影響の分析が不足していることが明らかとなった。 上記を受けて、学術論文化に着手し、国際学会の口頭発表に申し込んだ。申し込んだ学会は北米に拠点のある環境・資源経済学会(Association of Environmental and Resource Economists)とヨーロッパ環境・資源経済学会(European Association of Environmental and Resource Economists)の年次大会である。以上の理由より、研究は順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は分析および論文の修正を行う。これに先立って、すでに作成した論文を国際学会等で口頭発表する。具体的には、北米に拠点のある環境・資源経済学会(Association of Environmental and Resource Economists)やヨーロッパ環境・資源経済学会(European Association of Environmental and Resource Economists)の年次大会で発表する計画である。学会で得られたコメント等のフィードバックを踏まえて、論文を修正する予定である。その際の分析作業において、リサーチアシスタントに研究補助を依頼する。また、修正した論文の英文校正を実施する。その後、国際的な学術誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
順調に調査・分析を進め、論文を作成したものの、結果として、リサーチ・アシスタントへの作業依頼が予定量を下回り、謝金支払いが予定よりも少なかった。2020年度には予定通りの作業依頼が発生する予定であり、当初の目的で支出する計画である。
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