2021 Fiscal Year Research-status Report
国際要素移動があるもとでの経済統合の影響に関する一般均衡分析
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19K01622
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
細江 宣裕 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (60313483)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 応用一般均衡モデル / 労働移動 / 電力 |
Outline of Annual Research Achievements |
静学的な応用一般均衡(computable general equilibrlium, CGE)モデルを用いて、国際的な要素移動分析のための1国モデルを構築した。そこでは、海外に多くの労働者を送り出す国を想定して、国内における就労選択や海外への労働移動について内生的に描写できる構造を導入した。これを用いて、国内の最低賃金率の変更といった、労働市場に対する政府介入を考え、どれだけ国内の失業が増加するのか、また、その失業が、どれだけ海外移住に結びつくのか、さらには、国内にも海外にも就労先を見つけられなかった労働者(失業者)がどれぐらい発生するのかといった政策分析に取り組んだ。ここで問題となるのは、通常のワルラスの一般均衡モデルでは価格に対して中立的であること(ゼロ次同次性)、すなわち、価格の絶対水準ではなく相対価格しか意味を持たないにもかかわらず、最低賃金のように、価格水準を固定するような政策を考慮しようとしたときには、このゼロ次同次性が失われてしまうという点である。言い換えれば、相対価格を考える際に基準となる財は、通常のワルラス均衡モデルでは任意に選択できるはずであるのが、この基準財の選択如何で分析結果が量的にも、また、場合によっては質的にも異なったものになり得ることである。この点を配慮して、ある単一の財を基準財とするのではなく、一般に参照されるであろう財のバスケットの価格(価格指数)を基準財価格として固定して分析することとした。大まかな数値計算は完成し、その結果を草稿としてとりまとめつつある。これと平行して、電力価格に関する入札データを整理して、競争の効果を長期間にわたって検討することができるようにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画していたような、国際労働移動、とくに、国内の労働政策によって発生する海外移動を描写して分析するモデルが完成した。この結果を論文としてとりまとめる部分だけが残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の国際労働移動の分析結果について国際学会で報告し、また同時に、学内のDiscussion Paperとしてまとめ、最終的に、学術雑誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
研究を進めるに当たって、資料整理があまり進まず、また、現在執筆中の論文が英文校閲を書けるまでに完成していないために研究費があまり執行されなかった。来年度は、これを完成させて発表するための経費(資料整理アルバイト、英文校閲等)に充てたい。
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