2021 Fiscal Year Research-status Report
Information provision and the management of transboundary resources
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19K01626
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
関 絵里香 大阪大学, 経済学研究科, 招へい教授 (40611695)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 あい 立命館大学, 経済学部, 准教授 (10453979)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 河川流域環境管理 / 経済実験 / Collective action / Ambiguity / Waste disposal / Flood harzard |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では環境災害の確率分布に関する客観的情報が環境災害回避への自発的貢献行動にどのような影響を与えるかという問いに、経済実験とフィールド調査の手法で答える。 R3(2021)年度の実績は以下の通り。 【1】補完オンライン実験を大阪大学社会経済研究所(ISER)の経済実験室で行い昨年度実施分に加え、総計208名の参加者数を得た。比較条件は以下の通り。①No-info処理:基本情報(災害確率は滞留廃棄物の総量に応じて増加すること、滞留廃棄物の総量が0であれば災害確率は0、災害が必至になる閾値、及び意思決定前にすでに滞留している既存廃棄物量)のみ。②Partial-info処理:基本情報、及び既存廃棄物量での災害確率。③Full-info処理:基本情報、及び滞留廃棄物総量(10刻み)と災害確率。 【2】実験結果分析過程でうけた西村直子氏から、リスク中立性を前提にしたこれまでの理論モデルとNo-info処理の分析が不十分であること、曖昧性回避性向を考慮に入れる必要性の批判を受けた。そこで同氏の研究協力を得て理論モデルを再構築した。具体的には確率分布関数とリスク回避性の両方を考慮し以下の点を検討した。1)No-info処理の考え直し:この場合災害確率が一様分布に従うと想定した行動をとると推論していた。しかしNo-info処理で基本情報のみを与えられた個人にとって確率分布そのものが不確実なので考えうる確率分布関数のどれに従って行動するかはわからない。2)実験結果の分析過程で気づいたリスク回避性と被災の限界確率との絡みあい。そこで限界確率が逓減する確率分布関数を含め、リスク回避性を考慮に入れた理論分析に取り組んだ。 【3】 フィリピンの事例研究地域(レイテ島のラグナ湖に隣接するカランバ市)でQualtricsを用い、オンラインのフィールド調査で用いるアプリケーションの製作・試行調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
・前述の研究実績の概要【2】で述べた通り実験結果分析の過程で気づいたことを反映し理論分析を再構築する必要が生じた。このため追加時間を要した。リスク回避性と被災の限界確率との絡みあいについての分析は現在も進行中である。 ・コロナ感染症対策や外出規制の日常生活への影響やフィリピンの事例研究地域での協力者とその家族の体調不良等によりフィールド試行調査作業の進行が約6か月ほど遅れ、試行調査の回答者も少数にとどまった。本来は研究当事者が現地住民やステークホルダーとの会合を経て質問項目や調査スケジュールを検討するべきである。しかしR3(2021)年度はこれらをすべて遠隔操作で行わざるを得なかったことは作業の遅れや回答数の少なさに影響したと考える。オンラインフィールド試行調査の報告書を現在取りまとめ中である。 ・地域住民参加型の投棄ゴミ実態調査のフィージビリティスタディについては必要なパラメータ(河川の深さや水流の速度など)を測定する現地調査が不可能であったため保留している。
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Strategy for Future Research Activity |
【理論分析の再構築】まず、研究実績の概要【2】2)で述べたリスク回避性と被災の限界確率との絡みあいについて、限界確率が逓減、一定、逓増する場合での理論分析を完結する。そのうえで追加実験(オンライン実験II)を設計する。実績の概要【2】1)でのべたNo-info処理についてはオンライン実験IIの結果を分析後、曖昧性回避を考慮に入れた研究の展開可能性と方針を検討する。 【オンライン実験IIの実施】再構築した理論モデルから得られる推論を検証する追加オンライン実験IIを設計・実施する。オンライン実験IIでは一様分布、限界確率が逓減する確率分布関数も用い、曖昧性回避性向についての設問を含む予定である。すでに行ったオンライン実験とオンライン実験IIの結果を統合・分析しワーキングペーパー執筆予定である。 【フィールド調査の実施】R3(2021)年度に行ったオンラインでの試行調査の経験をふまえ、フィールド調査を計画し実施する。フィールド調査では事例研究地域での投棄ゴミの実態のほか、住民が環境災害の確率をどう認識しているかや環境災害に関する客観的情報提供を想定した場合の行動変容についても問う。フィールド調査の手法としては従来の対面ベースのほか、オンラインでの実施、個別の質問票またはグループディスカッション形式など、調査内容と手法を現地の状況に応じて柔軟に検討する。 以上のオンライン実験とフィールド調査の分析結果を統合し、研究活動の持続性を目指し、社会実装に向けた展開フェーズを立案・計画する。展開フェーズでは本研究の結果の妥当性を検証するフィールド実験の設計のほか、河川流域での上流と下流の依存関係の調査も視野に入れる。
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Causes of Carryover |
理論分析の再構築のため追加の時間を要し、追加実験用の予算が未使用になった。オンライン実験IIで使用予定である。 フィリピンの事例研究地域で試行オンラインでのフィールド試行調査は現地での協力者とその家族の体調不良等によりR3(2021)年度中に完了しなかったためその費用が未執行である。フィールド試行調査終了次第執行するほかR4(2022)年度実施予定のフィールド調査で使用予定である。
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Research Products
(1 results)