2021 Fiscal Year Research-status Report
中国民営ゾンビ企業発生の契機と径路の実証研究:開発ミクロ経済学からのアプローチ
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19K01633
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
白石 麻保 北九州市立大学, 外国語学部, 教授 (40425004)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 民営企業 / ゾンビ企業 / 中国 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに準備した、中国民営企業のデータを用い、民営ゾンビ企業の中国における出現が、どのようなきっかけと要因によってみられるようになるのかを引き続きサンプルの拡充、実証モデルセッティングについて試行錯誤を繰り返しながら、実証的に明らかにした。その過程で、企業規模や収益性で企業データをリサンプリングし、各サブグループごとのサンプルを用いた計測結果間に相違がみられるか、どのような民営企業が中国においてもっともゾンビ企業として市場から退出せずとどまり続けるのかを分析した。その際、どのような要因が市場からの企業の退出を抑制しているのかについても検証をおこなった。検証には、サバイバル分析の一種である比例cox hazardモデルを用いた。本研究におけるこのモデルセッティングは、いくつかの条件によってリサンプリングされた企業のなかでどのような特性の企業が淘汰確率が低いか、またどのような要因が市場からの淘汰確率を低めるのか、という問題意識によっておこなわれている。 分析をおこなった結果、企業間信用による取引企業からの与信が企業の淘汰確率を低める傾向があること、また、特に(中国民営企業の中で相対的に)大規模な企業の経営不振を補い、市場からのそれらの淘汰確率を低下させることが明らかになった。 試みとして国有企業のゾンビ企業化のケースも実証分析を行い、同様の傾向がみられるかを確認した。それによると淘汰確率を低下させる要因について、国有企業のケースでは、上記で得られたような民営企業の市場におけるゾンビ化の要因、背景とは異なる傾向が見られた。 これらの分析結果は初年度における研究課題遂行によって得られた諸結果を補強し、更なる知見を得るものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID19のパンデミックが続いており、渡航制限がかかる中、現地に赴くことが難しい。また現地で予定していたフィールド調査を行うこともさらに難しいため、最新の現地体験に基づく研究上の仮説の修正の必要性の検討、データに基づく分析結果の検証などが、可能な限り工夫しているものの不十分である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きゾンビ企業の市場における生存がどのような要因によって可能となるのかを検証する。その際、いわゆる「ゾンビ企業」の特徴の一つとされる低パフォーマンス(収益率が低い)企業だけを対象とするのではなく、それ以外の企業も対象として、市場経済の健全性を損なう/促進する要因にはどのようなものがあるかを、サンプルを拡張し、且つ企業の行動とパフォーマンスの変数を工夫しながら検証していく。 現地の政策や取り組みも分析の視野に入れつつ、課題遂行を推進していく。
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Causes of Carryover |
COVID19のパンデミックの継続により、今年度も予定していた国際学会への、フィールド調査の実施が不可能となった。そのため出張計画の取りやめが相次ぎ、予定していた使用額を当該年度に執行することができず、次年度への持越しとなった。今後、海外に滞在する研究者とのやり取りのための国内でのインフラをより充実させるとともに、感染状況、海外渡航に関係する政府機関や申請者の所属機関の方針を踏まえながら安全性を確認しつつ、海外渡航も視野に入れ、研究課題を遂行するために研究費を執行していく。
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Research Products
(2 results)