2023 Fiscal Year Annual Research Report
中国における農業経営の大規模化とその効率性に関する実証研究
Project/Area Number |
19K01642
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
寳劔 久俊 関西学院大学, 国際学部, 教授 (90450527)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中国 / 農業経営 / 構造調整 / 効率性 / 農地 |
Outline of Annual Research Achievements |
農地権利保護の強化と非農業就業の増大、労賃上昇による農業機械化の普及を背景に、中国では農地流動化が急速に進展するとともに、新しい農業経営体も数多く出現している。本研究課題ではこの新しい農業経営体の参入による農業の構造的変化に注目し、「経営規模」と「経営方式」という2つの分析軸を設定し、農業経営の効率性に関する実証研究を行うものである。 この研究目的を達成するため、一昨年度(2021年度)に実施した農業経営体に関するアンケート調査の個票データを利用して、本年度(2023年度)はデータベースの構築作業を進めてきた。本アンケート調査は、江蘇省を3つの地区(蘇北、蘇中、蘇南)に分類し、各地区を代表する地域を選出した上で、それらの地域から合計で約600世帯を無作為に抽出する方式で行われた。本年度は、調査データに関する詳細なクリーニング作業と記述統計の集計作業、そして委託先への調査原票データの確認作業を実施してきた。その結果、信頼性の高いデータベースを構築することができた。それに加え、研究書や学術論文、各種のマクロ統計や新聞記事データベースなどを利用して、中国の農業経営の実態に関する情報収集を行い、データ解析のための理論的枠組みと具体的な実証手法を検討してきた。さらに本年度は、アンケート調査の実施対象地域において現地調査を実施した。本現地調査を通じて、対象地域における農業経営の動向や農地流動化の進捗状況、農村世帯の就業実態に関する情報収集を行った。 これらの作業を踏まえ、農地貸借に関する市場機能と農業経営の効率性に関する推計モデル(フロンティア生産関数に基づく効率性の推計とその要因分析)の実証分析に取り組んできた。その結果、調査対象地域では農地貸借市場が有効に機能していること、そして経営規模と効率性との間には逆U字の関係が存在することが実証された。
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