2019 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical and Quantitative Analysis on the International Transmission of Financial Shocks through International Trade
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19K01646
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大土井 涼二 東京工業大学, 工学院, 准教授 (90433292)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 金融市場の不完全性 / 金融ショック / イートン・コータム型リカードモデル / 貿易の内延・外延 / 内生成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,国際貿易に着目した金融ショックの国際波及というテーマのうち,主に貿易の内延と外延がもたらす効果の違いに着目した研究を行った. 論文"Trade, Growth, and International Transmission of Financial Shocks"では,各国の財の生産性が確率的に決定され,それにより貿易パターンが決まるイートン・コータム型リカードモデルに金融市場の不完全性と内生成長を取り入れた2国モデルを構築し,一方の国が負の金融ショックを経験したときにそれが財の貿易を通してどの程度他方の国の景気後退をもたらすのかを分析した.ショック波及経路としての貿易の役割に着目するため貿易収支はバランスした状態を仮定し,金融ショックを経験する国を米国,経験しない他国をOECDの他35カ国(コロンビア加盟前の2019年当時)の合計という形でカリブレーションを行った上で波及効果を調べた結果,以下の4つの主要結果を得た.第1に,金融市場の統合がなく財だけが貿易されている状況でも,一方の国の負の金融ショックは両国の景気後退をもたらす.第2に,ただしその場合,ショックを直接経験しない国の景気後退は経験する国と比較して軽微である.第3に,ショックによる2国全体の貿易額の下落は,2国全体のGDPの下落の度合いを上回る.第4に,各国の実質輸出額の減少をその内延変化(各輸出品目の実質額の変化)と外延変化(輸出品目の数の変化)に分解した場合,内延変化のほうが輸出減少に支配的な効果を持つ.第3の結果は2008-2009年の世界金融危機時に発生したGreat Trade Collapseと呼ばれる現象と整合的であり,また第4の結果はその時期のフランス,ベルギーの輸出減少の要因を調べた実証研究の結果と整合的である. 本論文は現在投稿に向けて準備中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ショックによって貿易の内延と外延の両方が変化するモデルを構築し,国際波及を理論と定量の両面から分析するという本年度の研究計画は達成されている.また,本論文を国際学会で報告しており,そのフィードバックから査読誌への出版可能性が十分あると考えられるため.
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Strategy for Future Research Activity |
2国,もしくはより多数の国から構成されるモデルで国際波及効果を分析する際には,これまでは簡便化のため国々の対称性を仮定することが多かったが,本年度の研究ですでに対称性に頼らず,非対称な2国モデルの分析を終えている.したがって,次年度以降は貿易構造については本年度の枠組みを踏襲し,金融ショックを考える上で重要な金融部門の行動をより詳細に描写したモデルの構築を行い,分析を行う.
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Causes of Carryover |
理由:COVID-19の影響により年度末の出張予定が中止され,それに伴い支出を別の用途へ急遽変更したため.
使用計画:少額なので,次年度の計画にしたがって支出を行えば問題ないと思われる.
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Research Products
(2 results)