2019 Fiscal Year Research-status Report
Industrial structure changes of Japan from the population outflow mechanism
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19K01647
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
山下 隆之 青山学院大学, 地球社会共生学部, 教授 (20252158)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 人口流出 / 重力モデル / システムダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究申請時に進めていた予備的考察をまとめた内容を、4月に書籍として出版することができた。2013年に静岡県は人口流入県から人口流出県へと転じたが、その背景に20歳代女性人口の流出が始まっていること、そして同様な女性人口流出への転換が産業構造の近い広島県等にも観測されることを統計的データから論じた。 クリスタラーの中心地理論に基づく地理学的研究では、日本の都市構造には県庁所在市→大阪市・名古屋市・広域中心都市→東京都という階層性に沿った人口流が見られるとされてきた。上掲書第6章において、階層構造に沿った人口移動を重力モデルを使って分析したところ、県庁所在市の階層から大阪市・名古屋市・広域中心都市の階層への移動が減る一方で、県庁所在市から東京都へ直接に移動する割合が増えていること、そしてその傾向が女性人口の移動に強く表れていることを指摘した。 上掲書では国勢調査年毎の分析に留まっていたが、それをパネルデータ化して分析し直した結果を6月に学会報告した。パネルデータにしたことで、人口移動の変化をよりはっきりと示すことができた。また、新たに静岡市の下位の階層として、静岡県内市町から静岡市への移動を調べたところ、サービス産業の進展と女性の移動がプラスの相関関係にあることが浮かび上がってきた。 2019年度の後半は、静岡県と同じ兆候が他にもあるかどうかを調べるために、対象を46道府県に広げて、県庁所在市と県内市町との間の人口移動に関するデータベースの作成に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の所属機関変更に伴い、改めて研究環境の整備が必要となった。とりわけ、研究補助者の確保が難しくなった。このため、データの収集に遅れが生じている。年度末には、COVID-19により出張計画を取りやめることになった。 他方、重力モデルのシステムダイナミクス・モデルを作成し、国際学会へ投稿したところ、採択の連絡が入り、発表の機会が確保されることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
6月の学会報告では人口移動の最新動向を明らかにできた。次のステップとしては、そのような変化が生じた理由を探ることが課題である。静岡県における発見を手がかりとして産業構造の変化を加味した推計を進めるが、全国の県庁所在市と県内市町との間の移動に関するデータベースの構築を急ぎたい。 なお、COVID-19のため大学への入構制限が継続している。このため、自宅でも研究を進められる理論モデルの開発を先行させることになるだろう。昨年度の基本モデルを拡張していきたい。 COVID-19では、首都一極集中の新たな問題が明らかにされた。この点も視野に入れて研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
研究代表者の所属機関変更に伴い、研究補助者の確保ができなかった。このため予定していた謝金の支出が生じなかった。次年度から学部のゼミも始まるため、状況を改善したい。 所属機関の変更に伴い、学会報告にかかる旅費が不要となった。COVID-19でヒアリング等の出張も取りやめることとなった。次年度は有効に利用したい。 他方、研究環境の整備が新たに必要となったが、図書や資料が備品ではなく消耗品の扱いになった。このため、その他費目での支出の割合が増えた。
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Research Products
(2 results)