2021 Fiscal Year Research-status Report
Industrial structure changes of Japan from the population outflow mechanism
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19K01647
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
山下 隆之 青山学院大学, 地球社会共生学部, 教授 (20252158)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 人口流出 / 重力モデル / システムダイナミクス / 産業連関分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は人口流と経済活動との関係を探ることを目的としている。令和3年度は、新型コロナウイルスの感染拡大で進行した移動の自粛が、地方経済へ与えた影響に焦点を当てて研究を進めた。人口移動の導因として地方経済のサービス化に着目しているが、そのサービス化を牽引している産業のひとつである観光産業に焦点を合わせることとし、具体的には静岡県伊豆半島地域を事例として取り上げた。その理由は、東京圏からの観光客流入の是非が行政および住民によって問われていたからである。 観光を基盤産業としている同地域では、県外からの観光客の受け入れが域内の感染拡大を招くことを恐れ、経済的利益を優先するか地域住民の安全を優先するかという二律背反の対応が繰り返された。経済か安心かのトレードオフは国民経済においても問われている問題であるが、地域経済ではより逼迫した課題である。 伊豆半島地域への毎月の観光客を県内客と県外客に区別して推計したところ、元来の繁忙期である夏季において県外客の減少が顕著であることが分かった。県外客の変化がもたらす経済波及効果を月毎に検証するため、System Dynamicsによる動学的な産業連関分析モデルを開発した。シミュレーション分析の結果、①夏季の経済的損失が想像以上に大きかったこと、②2021年の損失が2020年より拡大していることがわかった。 分析結果は研究の進捗状況に合わせて、順次、国際会議で発表した。また、モデルの基礎となる静岡県の地域産業連関分析の進め方に関しては、他大学の専門家や県職員の力を借りることができ、その共同研究としての成果はテレビのニュースや新聞で紹介された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19によるキャンパスへの入構制限や大学の行動指針による出張禁止により、資料収集とデータ編集が遅れている。他方で、世界的なオンライン化の進展に伴い、国際学会へは2件の報告を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19が与えた観光産業への経済的損失に関する発表には、国際会議で関心が寄せられた。新型コロナウイルスと観光産業の問題について、国際観光による外貨獲得が必要な小国に関する研究はいくつか登場しているが、経済規模の大きい先進国に関する研究は未だ少ないようである。この面での社会的な貢献ができるように研究を継続したい。 当初の目的である日本の産業構造変化に関する研究は、キャンパスへの入構制限やオンライン授業への対応により、資料収集とデータ編集に遅れが出ている。今年度は、「令和2年国勢調査報告」の移動人口の就業状態等に関する集計が公表される予定の年度である。集計値が公表され次第、全国の県庁所在市と県内市町との間の移動に関するデータベースの構築を急ぎ、東京一極集中を再現するシミュレーション・モデルを完成させたい。 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が繰り返される中、東京都からの人口流出に社会一般の関心が寄せられるようになった。この逆流を説明できるよう研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
COVID-19によるキャンパスへの入構制限や研究補助予定者の相次ぐ感染により、研究補助者の確保ができなかった。このため計画していた謝金の支出が生じなかった。大学の行動指針に従い、ヒアリング等の出張も取りやめることとなり、旅費の執行も行えなかった。そうした制約は徐々に緩和されることと思われるが、海外渡航は禁止されているため、外国旅費の使用は繰越すことになった。 所属機関の変更により、本研究計画時の「備品」と「消耗品」の扱いが異なることとなった。このため、その他費目での支出の割合が増えている。
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Research Products
(2 results)