2020 Fiscal Year Research-status Report
情報銀行の経済分析ー個人の非合理性と便益の多様性への制度的対応ー
Project/Area Number |
19K01648
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
高口 鉄平 静岡大学, 情報学部, 准教授 (90611210)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | パーソナルデータ / 情報銀行 / 制度 / 便益 / 非合理性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、「情報銀行を中心としたパーソナルデータの取引に関する制度が機能するために必要な政策提言をおこなう」ことである。具体的には、本研究課題では「生産費用の概念が通常の財と異なるパーソナルデータについて、個人はその供給者として合理的な意思決定が可能なのか?」という問いの下、具体的には「個人のパーソナルデータに対する金銭評価の非合理性」、「情報銀行が提供する便益の多様性と選好」の2点を分析することで、本研究の目的である政策提言につなげる。 当該年度は、昨年度からの継続検討課題として、情報銀行が提供する便益の多様性について整理し、それらに対する個人の選好の相違を検討した。これらの結果については、研究代表者が関わる情報銀行の指針を検討する検討会等において、構成員として参加し政策検討につなげることができた。 また、当該年度は、本研究課題の主題である情報銀行について、消費者による情報銀行への評価決定要因の実証分析を行った。この分析を通じて、消費者の情報銀行に対する選好の一端を明らかにすることができた。さらに、情報銀行という枠組みの前提である、「経済財としてのパーソナルデータ」という概念の成立可能性について改めて検討した。この検討を通じ、パーソナルデータを経済財として扱うためには、個人の意思決定に関する合理性、また、法制度との整合性等において課題が残されていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題について、パーソナルデータの利活用に関する制度の整理等を本実施できており、おおむね順調に進展しているといえる。 また、本研究課題に関連して、学術成果の公表、政策検討につながる検討会への構成員としての参加も実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度の分析で明らかとなった、情報銀行を中心としたパーソナルデータの取引に関する制度を前提とした消費者選好について、その決定要因をさらに検討するとともに、パーソナルデータを経済財として扱ううえで、消費者の合理性におけるいかなる要素が課題となっているかについて実証的な分析を進めていきたい。また、昨年度以降とくに議論となっている、データの経済的価値に対する考え方について、これまでの政府のパブリックコメント等を分析し、検討したい。
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