2020 Fiscal Year Research-status Report
An Analysis of the Relationship between Expansion of Service Sector and Economic Growth
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19K01651
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 啓明 京都大学, 経済学研究科, 教授 (70534840)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | サービス化 / 経済成長 / 公共サービス / 民間サービス / 税負担 / 生産性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,民間サービスのみならず公共サービスの存在も考慮した経済成長モデルを構築し,公共サービス部門の拡大により,税負担の際限ない増大が生じるのか,それに伴い,経済成長率や経済厚生はどのような影響を受けるのかを分析することである.
この目的のために,2020年度は,2019年度に引き続き,モデル構築のための準備として,先行研究の詳細な検討を行った.それにより,消費者の効用関数の定式化,および,企業の生産関数の定式化に関して一定の知見を得た.具体的には,効用関数においては,民間サービスの消費と公共サービスの消費が補完的であるか代替的であるかを考慮する必要があること,また,生産関数においては,民間サービスが製造業部門および公共サービス部門に対する中間投入であることを考慮する必要があること,これら2点が明らかとなった.
これらの結果を踏まえて,研究計画の最終年度である2021年度は,分析の基礎となるモデルを構築し,解析的手法により,各部門の生産性上昇が,各部門の雇用シェア,各部門の付加価値シェア,経済成長率に与える影響を分析する.また,各種税率の変更が,各部門の雇用シェア,各部門の付加価値シェア,経済成長率に与える影響も分析する.これらの結果を踏まえて,先進国のデータを用いてモデルのパラメーターを推計し,数値シミュレーションを行うことにより,各国における製造業部門,民間サービス部門,公共サービス部門の雇用シェアおよび付加価値シェアの将来予測,さらには,経済成長率の予測を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度の計画は,2019年度の進捗状況を踏まえて,基本モデルを構築し,解析的手法による分析を行い,得られた研究成果を査読付国際学術誌へ投稿することであった.2020年度は,現実をより的確に捉えたモデル構築のため,2019年度に引き続き,先行研究の詳細な分析を行い,いかなるモデル構築が適切であるかを慎重に検討した.その結果,消費における民間サービスと公共サービスの補完・代替関係を考慮すべきであること,生産において,民間サービスの中間投入としての役割が高まっていること,そして,公共サービスの持つ正の外部性を考慮すべきであることが明らかとなり,本研究の分析の基礎となるモデルを定式化することにつながった.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度と2020年度に行った先行研究の精査およびモデルの定式化の検討を踏まえて,2021年度には,分析の基礎となるモデルを構築し,解析的手法および数値シミュレーションを用いて,各部門の生産性上昇や各種税率の変更が,各部門の雇用シェア,各部門の付加価値シェア,経済成長率に与える影響を分析する.モデルの定式化は次の通りである.消費者は,製造業製品,民間サービス,公共サービスを消費することで効用を得る.効用関数は2段階CES型となっており,民間サービスと公共サービスの消費が補完的である場合や代替的である場合を捉えることが可能である.製造業部門の企業は,労働と民間サービスを投入して,財を生産する.公共サービス部門の企業は,労働と民間サービスを投入して,公共サービスを生産する.民間サービス部門の企業は,労働を投入して民間サービスを生産する.公共サービスは,正の外部性を通じて各部門の生産性を上昇させる可能性がある.これらの要素を考慮したモデルを構築して分析を進める.
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Causes of Carryover |
2020年度の当初計画では,国内外の研究会や学会等で研究成果を報告する予定であった.また,国内外の研究者を研究代表者が主催する研究会へ招聘する予定であった.しかし,新型コロナウイルス感染拡大のため,研究報告や研究者の招聘を行うことが不可能となり,旅費や謝金を使用することができなかったため,次年度使用額が生じた.現時点において,状況は大きく改善していないが,日本国内におけるワクチン接種の開始等から判断すると,状況の改善が見通せるようになってきており,可能な限り対面形式での研究報告や研究者の招聘を行う予定である.
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Research Products
(3 results)