2020 Fiscal Year Research-status Report
Impacts of China's rural land reform on investment in agriculture, distribution, and political participation
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19K01655
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
木村 雄一 大分大学, 経済学部, 准教授 (80419275)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 土地所有制度 / 信用アクセス / 土地利用 / 所得分配 / 政治参加 |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画は現地調査によるデータ収集、それに基づく計量経済学的な分析に依存する。時間的には、計画の2年目まで経過したところだが、予備調査も本調査も、現在まで実行することができない状態のままである。したがって当然データはなく、その分析結果もない。つまり「研究実績は概要」に相当する内容は全く作り出し得ていない。
本研究と関連して、2016年度までの科研プロジェクトで、本計画とかなり近い問題意識(土地所有制度が農業投資に及ぼす効果)について、アフリカ・ガーナのデータを使った研究を行なった。これは調査と分析、第一稿の執筆までは2016年度までに完了し、2017年に学会報告していたが、この後、このとき受けたコメントを反映するための分析のやり直し、さらに自ら必要と判断した論点の拡張、そのための分析の追加、その部分の執筆、英語の修正、などを含めて 2018-2020年度の全てを費やした。
現プロジェクトが停滞を強いられている間、学術誌に掲載するための上記の作業を継続していた。昨年度(2020年度)末にようやく、Economic Development and Cutural Change に投稿を済ませた。しかし、前プロジェクトの作業がこれで終了したわけではない。当然だが、エディターの審査を通過し、通過した場合のみ査読者の review paper が得られるが、それによって課される課題をクリアしなければならない。しかし、少なくとも前プロジェクトのパブリケーションに向けた作業からは一旦完全に解放され、現プロジェクトの作業を本格的に開始できる状態に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
中国の土地制度改革の効果について研究のサーベイをある程度まで進めた。文献サーベイの結果、中国の土地改革のインパクトについての研究は Klaus Deininger のWB-中国チームを中心として 10本程度ある。これらからの知見は、主として土地市場の形成、そのことが、譲渡権拡充を通じた地域間移動と労働市場参加促進、担保権を通じた信用制約緩和による農業投資促進、それらによる所得上昇の効果、という論点に集中し、かつ結果は全て、所得上昇への有意な効果を示している。制度改革の進行に伴い、政府による社会実験は、様々なものが各地で実施されてきている。本計画の寧夏省プロジェクトは、それらの社会実験のうち最新のものではあるが、上記の諸研究の結果から実証的に既にかなりのコンセンサスが得られていて、追加的な社会実験も結果がかなり予測の範囲を出ない。このような意味で、研究の主要な問題設定について、結論がある程度自明である、あるいは、問題設定の幅が小さいように思われることについて強い不満を持つに至った。
新しい貢献を加える余地があるとすれば、土地市場・信用市場・労働市場での取引拡充へのインパクトと別に、所得分配へのインパクトが考えられなくもない。この点についても、土地レンタル市場が低所得層にとっての生産手段アクセスを改善し、所得分配の改善効果があることが既に示されている部分もある(たとえば Deininger et al. 2019)。とはいえ比較的研究が少ないことは確実であるので、経済活動促進の所得階層別などの差異に着目して詳細に明らかにすることは一定の意義があると言えるだろう。調査が可能になった時点で注力するべき論点のひとつである。
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Strategy for Future Research Activity |
最も早い再スタートは3か月後、2021年度の8月に、不可能な場合2021年2-3月に予備調査を開始することである。さらに遅延の場合でも2021年8月、年度末の2-3月、最終期限は計画延長して4年目の2022年8月まで考慮する。
開始が大幅遅延せざるを得なかったがこのことの利点が全く無いわけでもない。調査票の作成のみ進めたが、ここで、調査時点で、調査地に居住していない家計についての情報を得る方法が必要となる。土地制度の予測される効果として、土地の(請負権・経営権)貸し出し・売却と移住が焦点となり、移動後の経済的選択・所得などを観察する要請があるからだ。本来では長期間のインターバルを開けた2時点以上の調査でなければ得られない。回顧データの方法を使っても、通常は調査時点で居住している家計についての過去情報しか得られず、移動してしまったものについては補足できない。この問題にてついて、親族ベースのサンプリングによる情報取得方法を考案した。サンプリングの第一段階を家計単位でランダムに行い、そこから親族家計を追うことができる。土地制度改革が行われた 2013年以前に居住していたが調査時点では既に移動した家計をも、ある程度ランダムにサンプルに含めることが可能になる。親族社会と言われる中国農村の特性により、調査時点で居住していない家計の家族構成、土地取引の詳細、移動先での経済活動や子供の修学などの情報について詳細に聴き取りできることを期待する。
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Causes of Carryover |
予算の大部分は、中国寧夏省 石嘴山市でのデータ収集の現地調査に使用される計画であった。特に雇用する6、7人程度調査員の謝金や、必要な場合は宿泊費などである。本調査は、本計画の開始時点の計画で、もともと初年度(2019年度)ではなく2年目(2020年度)に行う予定であった。この場合、予備調査を初年度の冬に、本調査を2年目の夏を目処に行う予定であった。この予備調査予定の2019年度終盤にちょうどコロナ禍が始まり、2020年度末の時点でも収束に至らず、全ての計画が未遂行のままの状態となった。2019年1月から数えると現在2021年度春時点で1年半になろうとしているが、2019年1月から数えると現在2021年度春時点で1年半になろうとしているが、最短で、2021年度に実施できる状況となれば、まず予備調査の旅費と調査費用に使用する予定である。
使用計画は、内容に関してはこれまでの内訳のままで良い。ただし時間軸としては、まず予備調査、次に半年ほどを空けて本調査が望ましいので、2021年度の春までに予備調査、2022年度の夏に本調査を行うことができればありがたい。調査予定地では冬季の寒さが厳しいことが予想されるので、この場合のように本調査を夏に設定できれば理想的である。最低でも 理想の時間軸がとれない場合にでも、予備調査から本調査へ連続して実行できるための準備を、出来る限り整えておきたい。
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