2022 Fiscal Year Research-status Report
カナダの連邦・州協調型カーボンプライシング設計論に関する研究
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19K01656
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
川勝 健志 京都府立大学, 公共政策学部, 教授 (20411118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
RUDOLPH Sven 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (20737407) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カーボンプライシング / 東京都キャップアンドトレード制度 / リンキング / 炭素市場 / 気候ローカルガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、新型コロナウイルス感染症拡大のために研究期間を延長し、当初計画で3年目に予定していた2つのテーマ(①カナダ連邦カーボンプライシング提案の評価、②日本における国・地方協調型カーボンプライシングの可能性)について昨年度に引き続き取り組み、より深めることに注力した。昨年度はすでに数多くの学術雑誌や国際学会で研究成果を公表したが、今年度はさらにその視野を広げた。具体的には、昨年度に評価を試みたカナダの連邦・州協調型カーボンプライシングが他国のカーボンプライシング導入事例に比べてどのような特徴を有しているのか、その国際比較を行うことで析出し、本研究成果の充実化を図った。 その研究成果として挙げられることの1つ目は、9月にイタリアのパルマ大学が開催校を務めた「第23回環境税国際会(GCET23)」において、研究分担者と共に参加・報告したことである。同報告では、連邦・協調型カーボンプライシングが広がりつつあるカナダや地域レベルでカーボンプライシングが導入されてる米国や欧州の事例が所得分配に及ぼす影響について分析したうえで、その影響を緩和するために各国がどのような制度設計上の工夫を行なっているのかを国際比較し、それぞれの意義と課題を明らかにした。 2つ目は、日本の自治体レベルでのカーボンプライシングとして国際的にも注目されている東京都の排出量取引制度の最新動向とその評価を行った成果を研究分担者と共著論文として取りまとめ、Springer社から出版予定の学術書に掲載が決定したことである。同論文では、東京都の排出量取引制度を我々が構築した「持続可能性基準」に照らした場合に、いくつかの制度上の課題は見られるものの、当該地域での炭素市場での実績とりわけCO2排出削減効果については一定の成果を挙げており、ボトムアップでのカーボンプライシング政策の有益なモデルを提供していると評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は本来であれば、昨年度で終了予定であったが、本研究において決定的に重要なカナダでの現地調査を今年度も断念せざるを得なかったからである。その理由は次の通りである。1つ目は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、調査先との日程調整が難航し何度も再調整を余儀なくされるなど、調査計画をうまく定められなかったことである。2つ目は、急激な円安が進み、当初計画で研究代表者及び研究分担者2名の国外旅費として計上していた予算を大きく上回る可能性があったことである。3つ目は、研究分担者の所属先が計画当初では日本国内の大学であったのが、今年度の9月からドイツの研究所に変更されたことに伴い、研究分担者の職務が変更・多忙となり、年度当初に予定していた共同研究がやや滞ってしまったことである。 これらの結果、カナダでの現地調査で得られるはずであった情報や収集すべき資料等を入手できず、当初計画で2年目に予定していたテーマ(①カナダ各州のカーボンプライシング収入の活用実態と持続可能性、②連邦カーボンプライシング提案と地域排出量取引制度の調整問題)について、まだ十分な分析ができていない。今年度はオンラインではなく対面での調査を予定してカナダの調査先や研究分担者と日程調整していたが、前述のような理由でその調整がうまくいかず、研究期間をさらに1年延長してあらためて取り組むことを決めたことも進捗の遅れの一因である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記「現在までの進捗状況」の通り、昨年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響だけでなく、それ以外にもいくつかの理由によって、カナダでの現地調査を中止・延期せざるを得なかった。特に研究分担者の所属先変更は年度途中の急な異動ということもあり、研究期間の1年延長を決めた当初には予期せぬものであたったため、その影響は小さくなかった。しかし、研究分担者も新たな所属先での職務にも慣れつつあり、他方で新型コロナウイルス感染症をめぐる状況も落ち着きつつあることから、今年度は改めて研究体制を整えてカナダでの現地調査が実行できるように思われる。 とはいえ、新型コロナウイルス感染症拡大の影響は今後も不確実性を伴うことから、万が一再び現地訪問が困難になった場合には、調査先やシンクタンクなどの関係者にアポイントを取り、オンラインツールを用いたヒアリングを行う予定である。また、オンラインでのヒアリングさえ困難であった場合には、昨年度からそうした事態に備えていたように、現地の研究者に本研究の研究協力者として参画してもらうことをすでにお願いするなど、体制の強化を図っている。現地の研究協力者に我々が作成した現地調査計画書に基づいたヒアリングを依頼し、その結果を共有することによって、本研究を推進する。さらに今年度もフランスで開催が予定されている「第24回環境税国際会議(GCET23)」に参加し、申請者と研究分担者で構築してきた国際的な研究者ネットワークを活用して、本研究を遂行するための助言を得る予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由の1つ目は、新型コロナウイルス感染症拡大や急激な円安の進行の影響等により、研究代表者及び研究分担者が当初予定していたカナダでの現地調査ができなかったことである。 2つ目は、イタリアで開催された「第23回環境税国際会議(GCET23)」については、所属先がドイツに変更となった研究分担者は陸路で対面参加できたこと、研究代表者は上記の理由等により、当初対面での参加を予定していたが、オンラインでの参加に変更せざるを得なくなったためである。
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