2020 Fiscal Year Research-status Report
Effects of environmental regulation on productivity: International firm-level data analysis
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19K01659
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
本間 聡 東海大学, 政治経済学部, 教授 (70368869)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 環境経済学 / 確率フロンティア分析 / 生産性 / 技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポーター仮説によれば、「適切に設計された環境規制はイノベーションを誘発し、企業の国際競争力を高める」とされる。本研究の目的は、環境規制が企業の生産性にどのような影響を与えるのかを世界の企業データを用いて分析することである。そのため、約3億件の企業データが収録されている、ビューロー・ヴァン・ダイク社の企業データベースOrbisの企業データが用いられる。これらとOECDによる「環境政策の厳しさ指数」(Environmental Policy Stringency Index)を組み合わせることで、環境政策の強化が企業の生産性に与える影響を検証した。その際、その影響が必ずしも線形であるとは限らないことから、影響が非線形である可能性を考慮する。生産性の評価には、パラメトリックな効率性評価の手法である確率フロンティア分析を適用した。 環境政策として、環境政策全体だけでなく、直接規制、環境税、排出量取引、R&D補助金、非市場的政策といった個別の政策の影響も調べられた。また、製造業全体でなく、エネルギー集約産業と非エネルギー集約産業に分けた分析も行われた。 分析の結果、環境規制の強化が生産性に与える影響は非線形の場合があり得ることがわかった。個別の政策手段に関しては、環境税が生産性に与える影響はU字型、つまり環境の強化は生産性をいったん低下させるが、その後は上昇させる効果があった。逆に、排出量取引が生産性に与える影響は逆U字型であり、その強化が生産性に与える影響は上昇→低下であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のデータを用いて、世界の製造業約80万社から構成されるデータを構築した。さらに、環境規制の厳しさを変数にとって実証分析を行った。分析の結果、環境規制の強化が企業の生産性に与える影響は、U字型、逆U字型、増加型の3種類に分類できた。U字型の影響では、環境規制を強化していったときに初期段階では生産性を低下させるが、一定の閾値を過ぎると逆に生産性を向上させる影響があることを意味する。 このようなパターンは、製造業全体の分析では直接規制、環境税、非市場的政策について観察された。逆U字型の影響では、環境規制の強化が生産性に上昇→低下という影響を与えるがこのパターンは排出量取引と R&D補助金で観察された。また、エネルギー産業の一部では、直接規制とR&D補助金が生産性に対して星の単調な影響をもたらすことが確認された。 以上の結果は、オンラインの学会やセミナーで発表し、すでに論文にまとめられており、査読付き国際学術雑誌への投稿の手前の段階に来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度においては新型コロナウイルスの世界的な流行によってリアルでの国内外の学会発表等は皆無だが、オンラインの発表等でカバーできており、第1弾の論文も投稿の手前まで来ている。2021年度では、本研究で構築されたデータベースを使用して、別な角度からポーター仮説の検討を行うことを計画している。具体的には、包絡分析法(DEA)を適用して生産性を測定し、そこに環境規制の強化が与えた影響を調べることを検討中である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行によって、学会や打ち合わせなどのあらゆる出張がなくなったために次年度使用額が生じた。新型コロナウイルスの終息後に、これまで控えていた学会等の発表を行いたいと考えている。
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Research Products
(5 results)