2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K01668
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
溜川 健一 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (80409424)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 動学的一般均衡モデル / リレーションシップ・バンキング / 金融政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地域間の差を考慮しながら、リレーションシップ・バンキングをモデル化し、政策インプリケーションを得ることを目的としている。モデル化にあたっては、動学的確率的一般均衡(DSGE)モデルの枠組みを使用することとしている。 初年度前半は、DSGEモデルに「貨幣錯覚」を仮定するモデルを構築し、"Role of Money Illusion in a Modern Macroeconomic Model"として1本の論文にまとめた。この論文は、貨幣錯覚があることにより、金融政策が物価変化率に与える影響が小さくなることを示している。この結果は、昨今言われている、フィリップスカーブのフラット化を説明する可能性もあり、本研究で実施する政策効果のモデル分析をする上での貴重な情報となる。 初年度後半には、モデル構築にあたっての情報を得るため、このところ20年弱にわたって実施されている量的緩和政策が金融機関の貸出について与える効果をベクトル自己回帰(VAR)モデルを用いて検証した。特徴は、金融機関を都市銀行、地方銀行、信用金庫に分けた点であろう。「量的金融政緩和策が業態別の金融機関貸出に与える影響」として1本の論文としてまとめた。この研究から、量的緩和政策は金融機関の貸出にプラスの影響を与えるものの、地方銀行に与える影響は都市銀行よりも小さい傾向にあることが分かった。 上記の2つの論文は、まだ投稿するまでには至っていないが、準備が出来次第、順次何らかの雑誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で使用する基本的なモデルの研究について予想以上に時間がかかってしまっている。当初予定していた、地域の経済構造の差異(主に資本分配率などのパラメータの違い)の調査についてはまだ手付かずである。また、人口移動を考慮したモデルを構築する予定もあったが、まだ着手していない。 ただし、2020年度に予定していたリレーションシップ・バンキングをモデル化するための予備的な実証分析については、こちらの方が着手しやすかったため一部を前倒しをして実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度(2019年度)は、当初2020年度に実施する予定であったものを一部先行して、初年度の内容に替えて実施した。2年目(2020年度)は、初年度に予定していたものを実施する予定である。なお、研究の順番が入れ替わることについては、本研究では特に問題はないと考えられる。 新型コロナウイルスの影響により、研究報告がし辛かったり、コメントを受け取りにいくことが極めて困難になったりしており、これは今後も継続すると思われる。インターネットを活用するなどして、対応したい。 また、同ウイルス対策に伴い、授業の準備や学内の業務に割く時間が増加している。研究の遅れが予想されるが、その遅れを最小限に止めるように、研究時間を捻出していきたい。
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