2021 Fiscal Year Research-status Report
Relation between Risk Attitude and Performance in Non-storable Commodity Market
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19K01682
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
石井 昌宏 上智大学, 経済学部, 教授 (90323881)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リスクに対する態度 / Shipping Freight Rate / Stochastic Volatility |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「貯蔵不可能な財市場を対象とし, その市場参加者が有するリスクに対する態度の変化が市場成果(特に価格の確率分布)に与える影響の解明」です. 2020年度に引き続いて2021年度も海上運賃(shipping freight rate, Panamax)を中心的対象として, その価格変動の特徴が生成される構造に関する分析を進めました. ここでは, その主な成果の一部を説明します. 2021 IAMEにおいて研究報告しました. Kavussanos (1996), Kavussanos (2003), Alizadeh and Nomikos (2011)等に代表される海上運賃の変動に関する研究の系譜においては, その変動の特徴としてのstochastic volatilityを前提としてその分析が実行されています. すなわち, stochastic volatilityを表現する時系列モデルを基礎とする仮説検定が行われます. それに対して, 本研究報告では, 海上運賃の平均が不確実に変動する(stochastic mean)ことにより, 観測においてはstochastic volatilityのように見えるという可能性に注目しました. そして, その分析を基にしますと, 以下2点を得られました. (i) stochastic volatilityが完全に否定されることはありませんでした. しかし, それが海上運賃の変動へ与える影響は大きくなさそうです. (ii) stochastic volatility と比較して, stochastic meanが海上運賃の変動へ与える影響が有意に大きいと考えられます. ただし, これらについては今後より精査していく予定です.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究における最大の関心は, 直接観測することは不可能な市場参加者のリスクに対する態度の変化が海上運賃の変動に与える経路(構造)およびその影響の解明にあります. このため, そのデータ分析の基礎として, 市場参加者のリスクに対する態度を考慮した理論モデルが必要となります.しかし, これまでにデータ分析の基礎として用いてきた理論モデルTezuka et al.(2012)においてはdiminishing sensitivityとloss aversionが考慮されていません. そこで, 過去2年間と同様に継続して, 2021年度においてもLi and Yang(2013)と同じ価値関数を用いて, 市場参加者のリスクに対する態度が表現された理論モデルの構築を試行してきました. さらに, Barberis and Huang(2009)に変更をくわえながら, narrow framingをその理論モデルへ取り入れることも試みています. しかし, 現時点においても,モデルの高すぎる複雑性を解消する段階には到達していません. ここに多くの時間を費やしました. この点は研究の遅れにつながっています. また, 2020年度に行った分析において, 海上運賃の変動に本源的需要と関連する指標の影響が若干ではあるものの観察されました. そこで, Panamax船の需要に直接影響している主な積荷(石炭および穀物)の月次データを入手しました. ただし, このデータの一部に関しては, 単純な購入という方法によるデータ入手が困難でした. さらに, Panamax船の本源的需要要因および供給力と関連する要因を含めたデータ分析の準備(データの整理を含む)にも予想以上の時間を要してしまいました.
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Strategy for Future Research Activity |
現在の進捗状況を鑑みて, 2022年度は以下の3点に重点をおいた研究を計画しています. (1) 2021年度までの分析から, 以下3点が観察されました. (i) Panamax船の運賃変動に関して, stochastic volatilityが完全に否定されることは無い様です. しかし, それが運賃変動へ与える影響は大きくなさそうです. (ii) stochastic volatility と比較して, stochastic meanがPanamax船の運賃変動へ与える影響がより大きいと考えられます. (iii)本源的需要と関連する要因および供給力と関連する要因がそのstochastic mean へ有意に影響を与えていることが観察されました(現時点では未発表です). そこで, ここまでの結果をまとめて国際学会での報告および海外学術雑誌への論文投稿を行うことを計画しています. (2) 2021年度に引き続き, 海上運賃の変動を説明する理論モデルを構築する予定です. そのモデルにおいては, 市場参加者のリスクに対する態度として, diminishing sensitivity, loss aversion, narrow framingを考慮することを試みます. 同時に, 「先物市場がその対応する原資産価格に対する安定化あるいは不安定化効果」に関する理論モデルを用いた検討も計画しています. これらの研究においては, 手塚広一郎先生(日本大学), 石坂元一先生(中央大学)との共同研究という形式で適宜進めていく予定です. (3) 市場参加者のリスクに対する態度のモデル化から派生して, 資金提供者のリスクに対する態度と資金提供者間の競争を考慮したクレジット・スプレッド決定モデルを考案しました. 2022年度内に海外学術雑誌への論文投稿を計画しています.
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Causes of Carryover |
国際コンファランスや国内学会・研究会において研究報告を予定していました. しかし, 2020年度に引き続きcovid-19の影響を受け, オンライン参加あるいは中止になりました. この結果, 予定していた出張旅費のほとんどを2022年度へ繰り越すことになりました. これが次年度使用額が生じた主な理由です. 2022年度には国際コンファランスおよび国内学会への現地参加を予定しています. このため, この繰越を使用することを計画しています.
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