2019 Fiscal Year Research-status Report
戦略不全企業を考慮した国際競争力を高める直接投資戦略の実証研究
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19K01684
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
田村 晶子 法政大学, 経済学部, 教授 (30287841)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 直接投資戦略 / 戦略不全企業 / Miles=Snow理論 / 国際競争力 / ゾンビ企業 / ICTインフラ |
Outline of Annual Research Achievements |
利益を上げて企業の競争力を高める直接投資と、失敗して撤退し企業の競争力を損なう直接投資の差はどこにあるのであろうか。本研究の学術的な問いは、国際競争力を高めるための企業の投資戦略はどのようなものかを解明することである。本研究では、近年の貿易論で注目されている「企業の異質性」が海外進出パターンに与える影響・効果の分析に、企業の投資戦略タイプという視点を導入する。特に、従来の研究では除外されてきた、戦略不全に陥っている受身型企業を分析対象に含める。戦略不全企業は、利益をよく見ようとする利益調整を行うことで生き延びている可能性が高いため、「ゾンビ企業」の測定に関わる一連の研究を参考に、企業の受身型傾向を測定する。 本年度は、研究の最初のステップとして、企業の財務データを分析して企業の戦略傾向を測定するための理論的な枠組みの精査を行うとともに、対象企業の財務データの基礎的な特徴の調査を行った。特に「受身型」傾向の測定には、「ゾンビ企業」の測定に関する一連の研究を参考にするため、関連文献のサーベイを行った。Miles=Snow理論から作成された質問項目に答えるアンケート調査と理論分析の蓄積から、財務データを用いて企業の持つ4つの戦略タイプ(探索型、防衛型、分析型、受身型)を分類し、その戦略傾向の指数の構築を開始した。財務データによる分類結果は、アンケート調査との整合性とともに、日経の企業戦略情報データベースとの対応も確認して、その妥当性を注意深く検証している。 また、企業の競争力を高める戦略として、貿易や直接投資を利用した携帯基地局などのICTインフラの充実を通じた、起業の促進という視点を検討した。この視点は、貿易と直接投資が補完的に企業の生産性を高めるプロセスの検証につながるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、研究の最初のステップとして、企業の財務データを分析して企業の戦略傾向を測定するための理論的な枠組みの精査を行うとともに、対象企業の財務データの基礎的な特徴の調査を行った。Miles=Snow理論から作成された質問項目に答えるアンケート調査と理論分析の蓄積から、財務データを用いて環境に適合した投資戦略を持つ企業の3つの戦略タイプ(探索型、防衛型、分析型)の分類と戦略傾向指数の構築は、ほぼ完成しつつある。一方、戦略不全企業である「受身型」傾向の測定には、「ゾンビ企業」の測定に関する一連の研究を参考にするため、関連文献のサーベイを行っている。また、財務データによる分類結果は、アンケート調査との整合性とともに、日経の企業戦略情報データベースとの対応も確認して、その妥当性を注意深く検証している。4年間の本研究計画の初年であり、基礎的な部分の理論のサーベイ調査やデータの収集を行って研究を進めているが、本年度は確定的な結果をまだ出すことができていない。 一方、企業の競争力を高める戦略として、貿易や直接投資を利用した携帯基地局などのICTインフラの充実を通じた起業の促進という視点を検討し、貿易と直接投資が補完的に企業の生産性を高めるプロセスの検証につながる成果を得ることができた。この研究は国際学会での報告が確定していたが、新型コロナウィルスの影響を受けて、学会が中止になってしまい、学会参加者との質疑の機会が失われてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、企業の財務データを分析して、企業の戦略傾向を測定する作業を続ける。特に戦略不全企業である、Miles=Snow理論の受身型企業の戦略傾向の測定に関して、どのようなデータが有効かについての精査を行う。企業の戦略傾向を測定の妥当性を確認するため、このステップでの学術論文をまとめ、学会報告や論文投稿を行う。 その上で、次のステップへと進み、企業の海外進出データを分析して、企業の戦略傾向と直接投資パターンの関係を調べる。戦略タイプの分類、戦略傾向指数を構築できた企業について、東洋経済新報社「海外進出企業データ(テキスト版)」等を用いて、直接投資パターンを調べる。可能な範囲で、経済産業省「海外事業活動基本調査」も利用する。企業の海外進出の状況やその目的を調べるとともに、海外子会社の日本からの原材料輸入や日本への輸出の動向、さらに、海外子会社の利益等を調べる。そして、企業ごとに直接投資が貿易を増やす要因となっているか、減らす要因となっているかを検討し、直接投資の収益率を計測する。さらに、戦略タイプごとに、直接投資の形態、Greenfield直接投資かM&Aか、垂直的直接投資か水平的直接投資か、などに特徴があるか、子会社の利益率や日本へ支払われる直接投資収益などの違いがあるかを調べる。 本年度、研究成果を得ることができた、貿易や直接投資を利用した携帯基地局などのICTインフラの充実を通じた起業の促進という視点をさらに検討し、貿易と直接投資が補完的に企業の生産性を高めるプロセスの検証につなげる研究を行う。こちらの研究はほぼ完成しているので、研究報告や雑誌への投稿を積極的に行い、他の研究者からのコメントをもとに、改善を行いたい。
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Causes of Carryover |
本年度は研究の初年度であり、研究の第1ステップ「企業の財務データを分析して企業の戦略傾向を測定する」基礎的な研究を進めたものの、研究成果を国際学会などで報告するまでに至らなかった。次年度は、本年度に行っていた研究の第1ステップ「企業の財務データを分析して企業の戦略傾向を測定する」を完成し、研究成果を国際学会などで報告して、他の研究者からのコメントを受けて改善した上で、雑誌投稿を行う。
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