2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K01690
|
Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
橋口 善浩 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 開発研究センター 経済モデル研究グループ, 研究員 (40432554)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 人的資本 / 社会的収益率 / インドネシア |
Outline of Annual Research Achievements |
都市部における人的資本の蓄積はどの程度の収穫逓増効果をもつのか?教育水準の高い人材が地理的に集積すれば,相互のインタラクションから外部経済効果(スピルオーバー効果)が生まれ,社会全体で収穫逓増効果が期待できる。人的資本投資の社会的収益の大きさを知ることは,経済成長のメカニズムや教育投資政策の在り方を考える上で極めて重要である。これまで多くの研究者がこの効果の有無について実証を試みたが,結果は混在しており,未だコンセンサスは得られていない。さらに,人的資本の外部性の実証研究は,ほとんどが先進国を対象としたものであり,途上国での研究蓄積が少ない。本研究は,インドネシアの企業パネルデータ,歴史資料,GIS(地理情報システム)データを使って,人的資本ストックの社会的な収益率の計測を試みるものである。 最終年度である2021年度は,年度の前半にGISと歴史資料を使って人的資本ストック変数に対する操作変数を作成した。具体的には,1930年の人口センサスデータと統計地図情報をつかって,当時の欧米人の地理分布を変数化・デジタル化した。年度後半は,この欧米人の地理分布を操作変数として利用し,昨年度に作成した企業パネルデータをつかって人的資本の社会的収益率の計測を試みた。その結果,人的資本の地理的集積度が2倍になると,その地域の企業の生産性が平均で4.7~5.6%向上することが明らかとなった。教育水準の高い人材が地理的に集積することで,相互のインタラクションからスピルオーバー効果が生まれ,教育投資の収穫逓増効果が発揮されていると言えそうである。ただし,今回分析に使用した企業データはインドネシアの大中製造業企業のみであるため,サービス業などの他産業や中小零細企業において,人的資本の集中による生産性向上効果が生じるかどうかはわからない。この点は今後の課題としたい。
|