2021 Fiscal Year Research-status Report
A study on household characteristics and women's work
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19K01691
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
安部 由起子 北海道大学, 経済学研究院, 教授 (50264742)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 就業率 / 正規雇用 / 非正規雇用 / 所得効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
OECD諸国では、高学歴女性の就業率は、高学歴でない女性の就業率よりも大幅に高い場合が大半である。一方で日本では、大卒女性の就業率が高卒女性の就業率とほぼ同程度か、やや低い場合もあった。たとえば2000年には、OECD平均では高学歴女性のほうが高学歴以外の女性よりも26%程度就業率が高いものの、日本ではそれがほぼ同水準である(OECD (2002), "Women at Work: Who Are They and How Are They Faring?", in OECD Employment Outlook 2002, OECD Publishing, Paris, https://doi.org/10.1787/empl_outlook-2002-4-en)。この高学歴女性の就業率が低い原因が、大卒女性の夫の所得が高いと妻の就業が抑制される、所得効果によるものであるのかどうかを、2007年就業構造基本調査の匿名データを用いて検証した。分析方法には、以下の2点の特徴がある。第1に、就業のうち正規雇用と非正規雇用のそれぞれについて、どの程度所得効果があるのかを検討した。第2に、所得効果を所得の水準に応じて柔軟に推計する定式化を行なった。分析の結果、正規雇用・非正規雇用に分けると、所得効果は小さいことがわかった。つまり、夫の所得が上昇しても、妻の正規雇用就業率や非正規雇用就業率は大きくは低下しない。さらに、所得効果やその他の労働供給要因(妻の年齢、3大都市圏に居住するかどうか、子どもの年齢構成)では、大卒と高卒の女性の就業率の差を説明できないことがわかった。言い換えると、日本において大卒女性の就業率が高卒女性に比べて高くないのは、所得効果によるものではない。この成果を、2021年9月14日の労働経済学コンファレンス(オンライン開催)にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この課題では、国勢調査・就業構造基本調査の匿名データを用いた研究を実施しているが、新型コロナウィルス感染予防のために、大学への出勤と研究室への入室時間を制限する措置が取られた期間があり、その期間、分析のための時間をとることができなかった。また、世帯属性と女性の就業の関係の地域差をみるには、匿名データの地域区分では十分な分析は不可能なため、オンサイト利用による分析が望ましい。しかし、オンサイト施設の訪問には研究者の都道府県間の移動が必須になる。2021年度中は、その都道府県間の移動の目途がつかなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、2007年の就業構造基本調査匿名データを用いて所得効果(夫の所得が高いことで妻の就業が抑制される効果)を分析したが、その傾向が1992年から2002年までの就業構造基本調査でも見られるのかどうか、検証する。また、2000年から2015年の国勢調査の匿名データを用い、地域別に世帯属性と女性の就業の関連を分析する。さらに、地域別の傾向を詳しく見るために、オンサイト施設での就業構造基本調査データの利用を予定している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大に伴う移動制限のため、研究発表等のための国内外への移動を伴う出張は実施しなかったため、次年度使用額が生じている。2022年度は公的統計を分析するためにオンサイト施設を訪問する準備を進めており、その移動のために旅費を使用する予定である。
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