2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K01697
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮崎 毅 九州大学, 経済学研究院, 教授 (40458485)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 財政分権化 / 市町村合併 / 範囲の経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、合併を志向したが合併しなかった市町村のデータベース作成、地方政府における範囲の経済に関する研究などを行った。 第1に、合併市町村と未合併市町村を比較するのに必要となる、合併を志向したが合併しなかった市町村に関するデータベースを作成した。合併協議は行ったが合併しなかった地域は約520あることがわかったため、現在は元データからデータベースを作成している段階である。 第2に、財政分権化に関する理論モデルに基づいて、集権化と地域の異質性に関する研究を学会報告した。合併の理論分析と財政分権化に関する理論研究は基本的に同じモデルで分析できることから、財政分権化に関する研究は合併の経済分析にも重要な示唆を示すものである。この研究は、財政学で世界最大のInternational Institute of Public Financeで2020年8月に発表し、現在は海外の査読雑誌に投稿中である。 第3に、合併と関連して、地方政府の公共サービスに範囲の経済があるのかを日本の市町村データを用いて分析した。この研究では、日本で導入された中核市、特例市という規模の大きな市に追加の行政権限を与える制度によって、歳出の効率化が図られたのかを市町村パネルデータを用いて計量的に分析した。分析の結果、範囲の経済は権限の委譲後2,3年は顕在化しないが、中核市への移行では5年以上経つと費用削減の効果が現れることがわかった。事務の委譲により、直後には一人当たり歳出が2.8%増加するが、年0.6%削減される。市町村合併の費用削減効果については規模の経済が議論されることが多いが、合併によって特例市、中核市、政令市に移行したケースも多いことから、日本の地方政府において範囲の経済が存在するのかは合併の効果を議論する際に重要な視点である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関連する理論研究を海外学会で発表したほか、関連する実証分析を出版できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
合併を志向したが合併しなかった市町村のデータベースが完成したため、データベースのチェックを行う。また分析に用いる変数として、2000年の人口、一人当たり所得、転入者数、面積、失業率、政府間財政移転シェア、一人当たり負債額、一人当たり所得、従業者数、事業所数のデータベースを作成する予定である。また、財政分権化の理論分析から、合併後の人口移動に関する理論モデルを構築し、合併後、合併地域のどこに人口が移動するのか、合併しない地域の人口はどうなるのかなどを理論的に分析する予定である。最後に、範囲の経済が合併の効果を分析する際にも重要であることがわかったことから、合併時に権能が拡大したケースをデータベース化し、範囲の経済が市町村財政に及ぼす影響についても考察したい。
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Causes of Carryover |
理由:本年度実施予定であった、英文校正と学会発表を次年度に実施するため。 計画:次年度に英文校正と関連する内容で学会発表を実施予定である。
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