2019 Fiscal Year Research-status Report
An Economic Analysis of the Impact of Female Labor Supply on an Aging Japan within an Integrated Dynamic and Static Computable General Equilibrium Model with the Input-Output Table
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19K01704
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
加藤 竜太 明治大学, ガバナンス研究科, 専任教授 (60242971)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 人口高齢化 / 産業連関 / 医療サービス / 介護保険サービス / 動学的数値解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国の産業構造、将来推計人口を前提としながら、女性労働の進出と産業間の円滑な労働移動への効果という観点から、現実的な想定の下で、今まで別々に発展を遂げてきた静学的CGE(数値解析な計算可能な一般均衡)モデルと動学CGEモデルを融合し、我が国で今後予想される急激な人口高齢化の影響を分析した。具体的には最新の我が国の産業連関表から独自の社会会計表を作成して静学的CGEモデルの部分を完成させ、また、社会保障人口問題研究所が公表する最新(2017年推計)の将来推計人口を用いることによって動学CGEモデルの部分で利用される人口構成をモデル内で再現した。これらの融合によって、将来の人口構造の変化が産業構造に与える効果を分析した。 特に人口の高齢化の影響を見た場合、高齢化と関連が深いと考えられる医薬品、医療サービス、公衆衛生、社会保険・社会福祉、介護保険サービスの5分野に分析を集中させ、これらの分野への人口高齢化の影響を分析した。そこではこれら5つの産業への影響として、将来の高齢化に伴いどれほどの需要増加が見込まれるか、また、その増加に伴いどれほどまでに労働力がこれらの産業で必要になるかなど、経済の需給関係を一般均衡モデルに枠組みの中で分析した。 また、労働人口の減少が予想される中、女性労働の確保が重要である。育児と親の介護で費やされている女性の時間を仮に労働供給に費やした場合、経済に与える効果はこれらに費やしている時間すべてを労働に費やしたとしてもGDPに与える効果は1%程度であることがわかった。むしろ重要なのは女性労働に対する賃金の低さが問題であり、仮に男性の正規労働者と同一の賃金水準が確保された場合には同じような女性労働供給の増加はGDPを4%近く上昇させる可能性があることもわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年の初めから始まったコロナウイルスの影響で海外における研究発表、ならびに国内における意見交換などが一切できなくなり、国内外の研究者からのフィードバックが思うように進んでいない。できる限りオンラインを使った方法で意見交換やフィードバックを今後進めるように、努力する。特に海外における学会などでの発表の機会がない中、できる限りの方法で研究を発展させていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに2019年度で静学的CGEモデルと動学的CGEモデルの基本的な融合は完成した。その結果既に研究成果も出てきた。一方、失業の取り扱いがモデル内で未だ完全とは言えず、今後は失業を明示的に取り入れたモデルにバージョンアップする予定である。また、静学モデルと動学モデルの融合は未だ基本的な部分に限定されているので、これをさらに精緻化していきたい。具体的には融合されたFORTRANプログラムの改定を引き続き行い、かつ様々な研究の機会で研究成果を発表していきたい。一方、コロナウイルスの影響が今後どこまで続くかによっては国内外での発表の機会が制限されるので、なるべくオンラインなどの方法によっても、特に海外の研究者と連絡を取っていきたい。
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Causes of Carryover |
2020年の初めから始まったコロナウイルスの影響で海外での国際会議発表を断念、また、国内における幾つかの研究会にも不参加になった影響で、予定していた国内外の出張が全くできなくなってしまった。いっぽう、今年度は可能な限り多くの国内外の発表の機会を作り、積極的に研究成果を発表していきたい。
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