2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K01705
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
飯田 善郎 京都産業大学, 経済学部, 教授 (50273727)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 囚人のジレンマ / 社会的ジレンマ / 経済実験 / 連続時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
進捗状況のところで詳述するように、今年度も新型コロナウイルスの影響で実験室実験が困難な状況が長く続いたが、実験デザインと施行方法の見直しで本研究の主眼である囚人のジレンマ状況での被験者の行動について論文化するに最低限のデータを収集し、被験者の行動にどのような特徴が現れるかについてある程度の結果を得ることができた。繰り返しのある社会的ジレンマ実験においては、プレイヤー間の協調が成立しても、繰り返しの終了が近づくと協調が崩れるいわゆるエンドゲーム効果が表れる。連続時間囚人のジレンマでは一方が裏切っても相手がそれにわずかな時間で対応できるので、裏切りから得られるものが少ないことから、協調が実現しやすいが、それでも終わり際には協調が崩れだす。しかし相手の行動の変化に一瞬の遅れもなく対応できる完全連続時間囚人のジレンマ状況においては、被験者がある程度の習熟を経ると、エンドゲーム効果がほぼ消失し、高い水準の協調を実現することが示された。理論では無限期の囚人のジレンマは完全な協調も完全な裏切りも均衡になりうる。本研究のデザインは疑似的な無限期ゲームというには難点はあるが、一旦協調が実現したら、相手がトリガー戦略を取ると信じられるならずっと協調を維持することが合理的な判断になるという理論の帰結との比較と解釈において意味のある結果となりうる。現在これらの結果をまとめて海外査読誌に投稿中である。 また、社会的ジレンマ状況において協調が成立しやすいか否かはプレイヤー間のコミュニケーションの有無やプレイヤーの人数の影響を受ける。連続時間実験におけるそれらの効果を整理した成果を研究論文として海外査読誌(Journal of Economic Interaction and Coordination, Springer)に掲載することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度も新型コロナウイルスの影響により、実験室実験が困難であった。多くの経済実験研究者がオンラインによる実験を行うことでこの問題に対応したが、本研究は、昨年度のテスト的に行った結果からオンライン化が難しいと判断せざるを得えなかった。ワクチン接種率の上昇による感染の落ち着きを期待したがそれも叶わず、結果的に比較的感染者が少ないタイミングで、少人数の参加者で少しずつデータを集めることを繰り返すという形を取らざるを得なかった。そのような状況下であったが、実験デザインの見直しと、施行方法の工夫で、最低限のデータを集め、論文の形に落とし込むところまではこぎつけた。おおむね順調という評価はしたがって、この薄氷を踏むような状況下での上出来という意味ではある。
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Strategy for Future Research Activity |
レフリーの反応等を参考にしつつ、論文の改善を進め、必要であればデータの蓄積を進める。21年度に掲載された論文についても、いくつかさらなる発展研究の余地があり、可能であればそれらについても検証を行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
Covid-19の影響で予算の多くを占める経済実験の実施に制限がかかり、また補助要員の確保にも支障をきたしたため、予算執行がスムースにすすんだとは言えない形になった。来年度に関しては今年度実現したコロナ禍の下での実験実施に関する知見を活かし、適切に予算を執行して研究を遂行してゆきたい。
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