2019 Fiscal Year Research-status Report
Economic Analysis of Migration
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19K01713
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
内藤 久裕 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (00335390)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 移民 / 人口移動 / 労働市場 / 賃金 / 持続可能性 / 途上国 / South to South |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの経済学における学術研究では、途上国から先進国への労働者の移動が分析されてきた。しかしながら、経済がグローバル化していくなかで、南からの南への移動も重要になっている。というのは、先進国が移民への門戸を厳しくする一方、途上国の中での自然災害、紛争、自然資源の減少、気候変動、所得格差のため、南から南への移動も重要になっているからである。例えば、サブサハラ諸国における経済大国である南アフリカにおける外国人比率は8%になっている。
今回の研究では、その南アフリカ共和国(以下、南アフリカと略す)への移民の移動に注目した。南アフリカは、一人当たりGDPが3000ドル以下の国が圧倒的多数のサブサハラ諸国において、一人当たりGDPが14,000ドルある、中進国である。南アフリカでは、1994年に終了したアパルトヘイトを契機に、外国人比率が急上昇し、移民の割合は、2018年において8%となっている。一方で、南アフリカでの失業率はコンスタントに20%以上になっており、南アフリカの黒人によるゼノフォビア(外国人排斥運動)が社会問題になっている。本論文では、南アフリカ統計局による2001年、2007年、2011年の労働統計およびセンサスのマイクロデータを用い移民受け入れが失業率にどのような影響を及ぼすか研究を行った。分析手法に関しては、Card and DiNardo( American Econ. Review, 2000)によるEnclave approachを用いることで、移民比率の内生性の問題を処理した。得られた結果は次のようなものである。 まず所得に関しては、1パーセントの移民の増加は、南アフリカ共和国における、黒人の所得を 0.0016パーセント下落させることが分かった。一方で、失業率に関しては、1パーセントの移民の増加は、失業率を0.01パーセント減少させることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度の研究では、途上国から途上国への労働力移動が労働市場にどのような影響をあたえるかを、サブサハラ諸国から南アフリカへの労働移動を対象とすることで分析を行った。具体的には過去15年間のSouth Africaにおけるセンサスデータを収集し、各都市圏別の移民比率のデータを作成した。またセンサスデータから、失業、賃金のデータを収集した。enclave approachを用いて最小二乗法を使うことによって、移動の内生性の問題を処理した。推定結果は、妥当なものであり。
一方日本に関する研究では、enclave approachが、計画した方法ではうまく行かないことが判明した。具体的には、最小二乗法を適用する場合に、統計的正確性を高めるために、第一段階のF値が高い必要があるが、F値が4程度となった。これはt値でみれば2程度あることを意味するので、その変数自体の統計的有意性はあるが、最小二乗法を適用できるほど強くはないことを意味する。よって推定にあたっては、より工夫が求められることを意味する。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年以降、日銀は、いわゆる量的緩和政策を採用し、大規模な金融緩和に踏み切った。それにも関わらず、失業率は低下し続けているものの、大幅な賃金上昇は観察されず、目標であるインフレも起こせていない。一つの可能な説明は、同時期に日本が技能研修性制度で外国人労働を受け入れ続けているため、大幅な賃金上昇が起こらないのではないかというものである。2020年度における研究では、この仮説をデータを使って検証する。
推定に関しては、移民は、同国人が集まっているところに外国人は集まりやすいという性質を使ったenclave approachによる固定効果操作変数推定法を用いる。2019年度の試験的な研究では、比較的長い市町村別パネルを作成し、このenclave approachによって2段階最小二乗法の適応力を調査した。「現在までの研究の進捗状況」で述べたように、2段階最小二乗法を適用した場合に、第一段階のF値が4程度なり、10の値に満たないことが判明した。
この問題を解決するために、次のような仮説を立て推定を行う。2019年度においては、市町村別データを用いて、初期年度の国籍別外国人比率が後年度の国籍別外国人比率に影響を及ぼすと仮定した。しかしながら、仮に土浦市に勤務する外国人労働者は、土浦市に居住する必要はなく、近隣の市町村に居住する可能性がある。その場合、初期年度での国籍別の外国人比率と後年度の外国人比率の相関は低くなる。そのような問題を解決するため、都市圏というものを考え、その都市圏を一つの労働市場ととらえて分析を行う。そうすることによって、初期年度の外国人比率と後年度の外国人比率に高い相関性が生まれ、二段階最小二乗法による推定が可能になると考えられる。
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Causes of Carryover |
3月に国際学会に出席予定で会ったが、コロナウイルスの拡大によって国際学会が中止になった。
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Research Products
(1 results)