2020 Fiscal Year Research-status Report
Socioeconomic status and children's cognitive ability in Japan
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19K01716
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
モヴシュク オレクサンダー 富山大学, 学術研究部社会科学系, 教授 (50332234)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 子どもの学力 / 社会経済的地位 |
Outline of Annual Research Achievements |
家庭の社会経済的地位(SES)が子どもの学力に大きな影響を与えると、経済的不平等が拡大して世代間移動の停滞をもたらす危険が生じる。特に 貧困家庭の子どもは、教育環境の悪化により成人時において貧困から脱却する機会を失う可能性が高くなる(貧困の連鎖)。 本分析の目的は、「Trends in International Mathematics and Science Study (TIMSS)」の調査票データを利用して14歳児の学力に対してSESが与える影響(SES効果)の長期的な変化を調べることである。そのため、TIMSSの2003年、2007年、20011年、2015年および2019年の調査票データをダウンロードし、各調査を比較可能にするための調整を施した。そしてデータ整理と編集作業を完了させてから、家庭のSESが学力に与える効果の推計を行った。分析方法は教育生産関数に基づき、説明変数として「子ども本人の属性」、「家庭のSES」、「保護者の教育投資」、「学校の特性」、「教師の特性」などを使った。この分析で一番中心となる家庭のSESは直接観測が不可能であるため、「保護者の学歴」、「保護者の職業」および「資産指標」の3つの代理変数によって近似した。 但し新型コロナウイルス問題の発生後は、年度内で繰り返し自宅待機となり、自宅のパソコンのみを利用してのモデル推計には限界があり、予定通りに研究を遂行することは不可能であった。現時点では2003年と2006年の推計を実施したが、学力に対するSES効果の長期的変化の分析はまだ完了していない状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
「研究実績の概要」に示したとおり,新型コロナウイルス問題による自宅待機において、自宅パソコンのみを利用した分析に限界があり、研究遂行に支障をきたしている。さらに昨年度は2つの国際学会(スウェーデンとマレーシア)で研究成果を報告する予定であったが、いずれの学会も中止や延期となった。
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Strategy for Future Research Activity |
TIMSS調査(2003~2019年、6回分)の調査票を利用して10歳児と14歳児のデータをダウンロードし、各調査間で比較可能となるよう整理する。14歳児の「子どもの学力(Ability)」に与える「SES」の影響(SES効果)を直接効果と間接効果に分けて推計し、それらの長期的な変化を分析する。そのため、まず10歳児のデータで14歳児と同様のSES効果を推計する。そして疑似パネルの手法に基づき、以下の4つの組み合わせを利用して、ある母集団の10歳の時点におけるSES効果と、その母集団の4年後のSES効果を比較して分析する。 (i) 2003年の10才 --> 2007年の14才 (ii) 2007年の10才 --> 2011年の14才 (iii) 2011年の10才 --> 2015年の14才 (iv) 2015年の10才 --> 2019年の14才 但し、新型コロナウィルス問題の状況を考えると、次年度前半までの活動には引き続きかなりの制約が課せられると考えられる。そこで現実問題として、本研究の分析期間を1年延長することも検討すべきである。
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Causes of Carryover |
2021年度中に2つの国際学会で報告する予定であったが、新型コロナウイルス問題により延期になったことがその理由である。新型コロナウイルスの状況が良くなり海外への渡航が可能になった場合は、海外の学会へ参加するための旅費や参加費に執行する予定。
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