2019 Fiscal Year Research-status Report
Sustainability Analysis of Japan's Public Sector Finance and Economy by State-space Model and Dynamic General Equilibrium Model
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19K01720
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
吉田 素教 大阪府立大学, 経済学研究科, 教授 (60360046)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 財政の持続可能性 / Bohn / 財政反応関数 / 状態空間モデル / カルマン・フィルター / パネルデータ分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は研究計画中の「課題1」である、「日本の政府部門はこれまで持続可能な財政運営を行ってきたかどうかを検証する」を実施した。その具体的な内容は次のとおりである。 (1) 日本の一般政府ならびにそのサブセクターである、中央政府、地方政府(総体)、社会保障基金(総体)、それぞれの政府部門財政の持続可能性を分析した(分析期間1970-2017年度)。当該分析は、状態空間モデルとカルマン・フィルター(Kalman Filter)を用いて、時間可変パラメーター型財政反応関数を推計することにより実施した(財政反応関数の理論はBohn (1998, 2005)に起源を持つ)。結果、サブセクターの地方政府(総体)、社会保障基金(総体)における財政運営の持続可能性は確認できるものの、一般政府や中央政府においてはそれを確認できなかった。そのため、日本の政府部門全体としては、持続可能的ではない財政運営に陥っている可能性が高い(特に1990年代末から)という知見を得た。 (2) 報告者自身が過年度に行った、日本の都道府県財政の持続可能性に関する分析の修正を実施した(分析期間1974-2016年度)。当該分析は44都道府県のパネルデータを用いて実施した(岩手県、宮城県、福島県は2011年の東日本大震災以降、中央政府から特別な財政移転を受けているため、当該分析の対象から外した)。結果、将来負担率で判断した財政状況の状態(良い、並み、悪い)にかかわらず、どの都道府県も基本的には持続可能な財政運営を実施していること、中央政府から厚い財政移転を受けるほど、都道府県財政は健全化する傾向にある等の知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度において、概ね計画通りに研究を進められた理由は次の通りである。 (1)実際にデータを用いた分析に入る前に、研究計画中の「課題1」(前掲5.研究実績の項参照)に関する、既存研究のサーベイが適切に実施できたこと。(2)分析に用いるデータを、計画通り、公的な公表データから適切に入手できたこと。(3)分析に用いるモデルの構築とプログラムの作成において、想定と大きく異なる事態が発生しなかったこと。 また、前掲5.“研究実績の概要”の項中の(1)の研究内容は、2019年度中に、本報告者の本務校のディスカッション・ペーパーとして刊行された。また、当該研究の前半部は本報告者が所属する国内学会で報告済みであり、かつ、当該研究の後半部を中心とした研究全体について、過日、本報告者が所属する国際学会での報告を申し込んだところである(採択の可否は2020年6月に決定予定)。なお、これらの詳細については後掲10.“研究発表”の項を参照されたい。次に、前掲5.“研究実績の概要”の項中の(2)の研究内容についての論文は、現在、海外の学術誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、研究計画中の「課題2」である、「シミュレーション分析を通じて、効率性と公平性のバランスを取りながら、日本経済と政府財政を持続可能とする財政金融政策を明らかにする」に取り組む。 当該研究を遂行するためには次の作業が必要となる。(1)分析モデルである、GSDE(dynamic stochastic general equilibrium )モデルの構築、(2)データの収集、(3)シミュレーション・プログラムの作成。このうち、2020年度は主に前2者を遂行することを予定している。特に(1)分析モデルの構築においては、政府部門の歳入安定策としての資産課税、貨幣量と住民厚生を繋ぐメカニズム(公債のマネタイゼーション政策を考慮するため)、金融の量的緩和政策を反映した利子決定式、複数タイプの家計、人口推移(少子高齢化の伸展を考慮するため)等に関するモデル化を図る。更に、上述の資産課税の効果を検証するモデルに関するシミュレーション分析も実施する。 また、もし時間が許せば、世代毎の将来像を近似的に予測できる手法である、世代会計(generational accounting)モデルによるシミュレーション分析も実施したい。
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Causes of Carryover |
2019年度研究費の一部(全体の約6.6%)が2020年度へ繰り越しとなった。これが生じた主な理由は、2019年度において、国際学会での研究報告が実施できなかったことによる。このことを踏まえ、上記繰越分は2020年度の国際学会出席への旅費等に充当することを予定している。
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Research Products
(2 results)