2022 Fiscal Year Research-status Report
雇用の質を考慮した地域・企業規模間等の定量的な雇用の波及過程と効果の研究
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19K01721
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
風神 佐知子 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (00510851)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 正寛 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (80281872)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 留保賃金 / 在宅勤務 / 最低賃金 / 地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題研究の目標は、大企業や都市部での雇用が、中小企業や地方の雇用創出へどのように波及するかを検証することである。2022年度は、第一に各産業の東京との相対的生産性、各都道府県・産業との連関、雇用および消費について分析した。その結果、高生産性部門の乗数は低く、地域経済の成長に効率的につながっていなかった。さらに、生産性の高い部門が生み出す雇用は少ないことが分かった。消費面からは、高所得層は指数関数的に教育の消費を増やすが、県内では生産面・雇用面で他産業に波及していないことや、都道府県別産業別生産性と居住県外での消費について明らかにした。第二に、最低賃金は都道府県別に決められ、労働市場の状況(独占度)により影響が異なることが予測されることから、最低賃金の変動が労働需要に及ぼす影響とその影響が地域差によって異なるかどうかを日本の求人広告データを用いて検証した。その結果、最低賃金を上回る求人の増加と最低賃金を下回る求人の減少は非対称的な動きであること、労働市場が独占的であればあるほど、最低賃金の増加によって提供される仕事は(そうでない市場より)多くなることが明らかになった。 第三に、日本の求職者の希望賃金のデータを用いて、コロナ禍で普及した在宅勤務が留保賃金に与える影響および地域の労働市場との関連を分析した。地理的な違いを分析すると、自治体の失業率は留保賃金に負の影響を与え、また、求職者の求人の職業構成によって決定される自治体レベルの在宅勤務の実現可能性はフルタイムの仕事の留保賃金を減少させていた。第四に、在宅勤務は女性の就業に好ましく地方から都市部への移住を抑制することが世間で期待されたが、分析の結果、地方よりも都市部で在宅勤務の実現可能性が高い仕事が供給され、女性が働きやすい仕事が多い自治体や、職種が限られている自治体では、在宅勤務の機会が少ないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究期間では地域労働市場について分析を積み重ねてきたが、研究期間の後半になり、本研究課題の核心である波及についての分析をはじめられたため、計画通りに進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度になるため、2022年度の分析を深化させる。さらに、これまでの研究期間で行った各分析を横断する最終考察・分析を行う。
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Causes of Carryover |
本研究課題で世界的に著名な研究者を2023年はじめに招へいし、指導・議論をする機会を得られた。その結果、当初は、新型コロナウイルス感染症拡大以降、水際対策が緩和されたことや、燃料費の高騰、円安により航空券が高騰していることなどから前倒し申請を行った。しかしながら、費用清算時期は2022年度内に行う必要はないこととなり、次年度使用額が生じた。 2023年度は当該研究者を実際に招聘することに使用する。また、最終年度であるため、研究総括に必要なデータ分析に係る費用や図書、結果報告のための出張旅費などに使用する計画である。
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Research Products
(5 results)