2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K01731
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
池田 直史 日本大学, 法学部, 准教授 (90725243)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 異質的期待 / 曖昧性回避 / 資産価格 |
Outline of Annual Research Achievements |
金融資産の価格がファンダメンタル価値に関する投資家の予想を反映して決定されるならば、その予想のばらつきそのものが、資産価格の曖昧性を増加させる可能性がある。本研究では、曖昧性回避的な投資家を仮定して、投資家の予想のばらつきからくる曖昧性を負担することに対して追加的なプレミアムが支払われるために、均衡において期待収益率が高くなることを理論的に示す。そして、その妥当性を機関投資家の予想データを用いて検証することを目的とする。 本年度は、理論モデルの構築を完了させた。投資家の曖昧性回避を定式化するために、滑らかな曖昧性モデル(smooth ambiguity model)を採用した。また、投資家は負の指数型効用関数(CARA効用関数)を持ち、投資家が将来に受け取るペイオフは正規分布に従うと想定してモデルを展開した。投資家の予想については、同じ情報を受け取っても主観的確率分布がばらつく状況を想定し、各投資家の主観的確率分布の期待値も正規分布に従うと仮定した。これらの設定の下、当初の予想通り、投資家の予想のばらつきが大きいほど、均衡において期待収益率が高くなることが示された。構築した理論モデルは、投資家の予想のばらつきそのものが、曖昧性の源泉になることを示した点で先行研究に対して貢献がある。現在は、この成果を論文にまとめているところである。 また、本研究の出発点となっている、空売り制約の下で投資家の異質的期待が資産価格に与える影響を分析した論文についても完成度を高め、現在は投稿段階にある。さらに、期待形成に関連して、経営者の楽観度が投資行動に与える影響について分析した論文のジャーナル掲載が決まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論モデルについて解析解が得られない懸念が生じたが、無事にこの問題は解決された。次年度は、この理論モデルの妥当性を検証する実証分析に移れることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
理論モデルについては解析解が得られたため、次年度は、その解について比較静学を行い、得られた予測の妥当性を実証分析によって検証する。そして、理論モデルと実証分析の結果を論文にまとめ、国際査読誌への掲載を目指す。
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Causes of Carryover |
移籍に伴って前任校で使用可能だったデータベースが使用できなくなり、今年度の資金を繰越して次年度の予算と合わせることで、その購入資金に充てる必要が生じた。これに加え、論文の英文校正費用、投稿費用などに使用する予定である。
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