2023 Fiscal Year Annual Research Report
金融機関のガバナンス改革と地域経済の持続可能性に関するミクロ計量分析
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19K01734
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大熊 正哲 岡山大学, 教育学域, 准教授 (60507987)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 地域・中小企業金融 / 社会ネットワーク / コーポレート・ガバナンス / ネットワーク分析 / 地域経済 / 協同組織金融機関 / 構造的空隙 / 弱い紐帯の強み |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間全体を通じて実施した研究の主な成果としては,(1)岡山県内に本社を置く約3,000社のローカル企業の役員構成に関する情報から,地域経済における役員兼任を介した企業間ネットワーク構造を数理社会学で用いられる「ネットワーク分析」と呼ばれる研究手法によって定量的に明らかにしたこと,(2)岡山県に本店を有し営業している中小・地域金融機関のネットワーク形成のあり方をネットワーク分析で用いられる諸指標により評価したことが挙げられる。人間が互いの行動を規定しあう社会的な存在である以上,人間行動のより精緻なモデル化を行ううえで,ネットワーク分析の経済学への応用はきわめて有用であることが指摘されている。しかしながら,経済学なかでもコーポレート・ガバナンス論をはじめとする金融研究においては比較的新しい研究アプローチであり,これまでに十分な蓄積があるとはいいがたい。そうしたなか,本研究が地域・中小企業金融研究における従来の「地域経済」の捉え方,すなわち行政区域単位ないし空間的に分断された市場としてのそれに代えて,新しい「地域経済」の捉え方,すなわち企業間ネットワーク,特に役員兼任による企業間の人的結合としてのそれを特定の地域を対象とした具体的な事例によって提示したことには重要な意義があるはずである。 最終年度に実施した研究の主な成果としては,社会ネットワーク分析における「弱い紐帯の強み」や「構造的空隙」といった概念に基づき,「ローカル企業が形成する企業間ネットワークにおいて,金融機関は役員兼任による人的結合によって異なる企業グループ間の橋渡しをしている」という仮説の検証を行った。暫定的な結果として,岡山県に本店を有し営業している中小・地域金融機関について,Burtの拘束性でみる限り,こうした仮説は支持されないことを示した。
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